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[コラム] 石仏のアルファ碁

  • 青瓦台(韓国の大統領官邸)を訪問した習近平国家主席が国賓晩餐会で、このような言葉を切り出したそうです。

    「今日のゲストはほとんど知りませんが、ひとりだけはよく知っている人です」

    そして、囲碁棋士の李昌鎬を指しました。

    自分は「石仏」の熱烈なファンだと、韓国政界・財界の偉い方々をまるで聞いたことも見たこともない人たちとして扱ったという話も伝わってきます。

    もちろん、ここには少し晩餐会で自分自身を誇示しようとする政治的、外交的な腹案が敷かれていたことでしょう。しかし明らかに、全盛期の李昌鎬は中国ではほとんど神的な存在として扱われていました。日本でも超一流の棋士であった故・加藤正夫9段が「他の棋士の囲碁は一度だけ見れば理解できるが、李昌鎬の囲碁は3回見ても理解するのは難しい」という言葉を残したりしました。

    2005年、中国で日本と中国のトップクラス棋士5人を連破し、国際団体の棋戦を韓国の勝利に導いたあと、中国棋院の関係者は「李昌鎬が韓国で生まれたのだ。どうしろというのか」と返したこともあります。

    当時の李昌鎬の力はどこから出てきたでしょうか。

    中国の新聞に載せられた記事のヘッドラインが、これに対する答えを与えます。

    「王磊で石仏を相手にするのは、卵で石を打つようなもの!」
    「石仏が揺れないのは、まるで泰山のようだ」

    石仏の李昌鎬は、碁盤の前では相手を全く意識せずに静かな心を保つ盤前無人の状態でした。どうしたら人間が勝敗に無関心で、勝ったときも負けたときも静かな心を保つことができるでしょうか。だから、石仏が神の境地に至ったと表現していたのです。

    イ・セドル9段と世紀の対決を繰り広げる人工知能アルファ碁は、その時代の李昌鎬を連想させます。

    イ・セドルは昔、李昌鎬と対戦したときのように自ら崩壊してしまいました。

    第2局で敗北した後、「最善を尽くした」と話しましたが、彼は自分の棋才を見せることもできませんでした。どの部分で不利になったのかも確実に突き止めることができませんでした。

    石仏を相手していた多くの棋士も似たような言葉を残しました。「李昌鎬と打つと、何を間違って打ったのかがわからない(中国の王檄9段)」、「李昌鎬と囲碁を打つと、まことに不思議だ。私が望んだ通りに打ったのに、囲碁はいつも不利になる(ルイ・ナイウェイ)

    静かな心を失ったため、相手を軽く見たり、恐怖も感じ、相手の意中を窺えず、ただただ石を置いただけ。アルファ碁と対決する盤上のイ・セドルから筆者は、そのような印象を強く受けました。

    アルファ碁の代理人は終始無表情でした。自分が負けることも、勝つこともないのだから、ただただ石を持っていって置くだけです。代理人に指示するアルファ碁も同様だったことでしょう。些細なミスが出ても泰山に吹く風のように感じたことでしょう。

    イ・セドルと対決するアルファ碁から、李昌鎬の影が見えます。アルファ碁は囲碁が追求する道理の境地に至ったのでしょうか。

    • < 1人で対局場に向かう李昌鎬。この場面は『応答せよ1988』でパロディされた >


  • O2CNI_Lim, Chul | 入力 2016-03-13 08:00:00