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[コラム] 私の一票が当落を左右するのなら

  • 去る2008年に公開された『チョイス!(原題:Swing Vote)』という映画があります。

    米国大統領選挙を前にして、フラフラとビールばかりを飲む父親に投票しろと催促する12歳の娘が登場する映画です。酒に酔って最後まで投票しない父親のバド・ジョンソンの代わりに、娘(モリー・ジョンソン)が隠れて投票しましたが、投票機械がダウンして無効になっていまいます。しかし、この一票がアメリカ大統領を選ぶ票になってしまうのです。

    彼らが暮らす小さな町テクシコには大統領候補とメディアが集まり、バド・ジョンソンの一票を得るためにキャンペーンを繰り広げます。

    俗物たちが威勢を張ります。政治家もマスコミも、人気者になったバド自身ももともと俗物だったのですから、説明の必要がありません。ニュースアンカーになることが夢だった記者のケイトは上司にこのような言葉を聞きます。

    「ジャーナリズムで学んだことは全て忘れろ。これは今やニュースでも人生でもない。これはもっと大きいものだ。テレビジョンだぞ」。政治がテレビショーに転落する瞬間です。ピザのデリバリーに来た従業員の「バドはお腹が空いているようだ」という言葉が放送されます。

    政治家たちは信念を諦めます。大統領のアンドリューは釣りが好きなバドの票を得るために共和党の立場である経済開発を捨てて、環境保護に急旋回します。民主党の候補であるドナルドはバドがメキシコからの移民により職場から追い出される危険を感じているという事実を知って、移民の政策を変更します。

    年齢に似合わず、社会意識の強い娘のモリーは父親に代わって、多くの人たちが送ってきた自分たちの苦しい立場を訴える手紙を読んで、父親に大統領選挙の討論会に出るように説得します。手紙を読んでバドが変わります。

    彼は討論会を始める前に、慎重に口を開きます。「米国に本当に敵がいるとしたら、それは私自身です」

    数日後に控えている国会議員の総選挙を前にして、この映画について考えています。映画は米国大統領の選挙で起こり得るコミカルな状況を設定して、衆愚政治を思うがままに皮肉ります。

    衆愚政治は1人1票の民主選挙を採択した世界のどの国でも発生し得る弊害です。有権者たちが大きなビジョンを見ずに、自分の利益だけを追求して1票を投じる以上、避けることのできない宿命でもあります。

    韓国の選挙で最も多い有権者は徐々に高齢になってきています。今年の選挙でも、60代の有権者が23%にもなります。高齢者が未来世代のための懸命な選択をするのなら、どれほど良いでしょうか。しかし、韓国の高齢者は頑固に自分の利益に執着します。犠牲は徐々に減り、合理的な判断よりも感情に左右されます。

    大衆が自分の利益だけを追う限り、暗鬱とした現実は改善されません。映画『チョイス!』は政治家とメディアに期待しません。マスコミや政治家は愚昧な大衆が目覚めることをそれほど望んでいません。より良い暮らしを望むなら、大衆自身が目を覚ますしかありません。
  • O2CNI_Lim, Chul | 入力 2016-04-10 08:00:00