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[コラム] 路地商圏の災難支援金

  • 一時、大学が密集した新村(シンチョン)で、かなり大きな服屋を営んでいた男の話だ。韓国が通貨危機に見舞われた時、失業した彼が服屋を始めたのは、若い頃、漠然とファッションデザイナーを夢見たからだそうだ。

    デザイナーになるにも、衣類メーカーを設立することも大変なため、服屋に夢を代えたのだろう。お金が少ないから 新村の繁華街からは少し離れた阿峴洞(アヒョンドン)住宅街の入り口に店舗を準備した。東大門(トンデムン)、南大門(ナムデムン)、そして中古市場を歩き回り、一着ずつ直接選んだ製品で店舗の空き空間を満たしていった。

    ついに店舗を開いたが訪れる客はほとんどいなかった。たまたまドアを開けて入ってきた女子学生はオーナーが男だと知って、また出て行ってしまったり、ある客は「男がオーナーなの?」と不思議そうに眺めたりした。

    たくさん売ったとしても1週間に3、4着。
    どれだけ悔しかっただろうか?
    ただでさえ客足が遠のいているのに、店に入っては散らかして行ってしまったり、5、6着も更衣室に持って行って、着てみたら一束置いて行く客もいた。怒りが込み上げてきたが、笑って乗り越えた。その代わり小さなチョコレートをプレゼントし、どんな服がほしいのか、友達や周りの人がよく買う服は何なのかと尋ねた。

    文字通り商売がうまくいかない時期がほぼ半年近く経った時、奇跡が起きた。客足が増えたのだ。デザインが洗練された服ばかりの店、親切な店として有名になり、近くの繁華街の多くの衣類売場を置いて、わざわざ彼の売場を訪れる客も増え始めた。

    6か月、失業して受け取ったわずかな退職金で新しい人生を設計した人にとって決して短くない期間だ。笑顔を忘れるのに十分な時間だ。

    そんな彼から見て、新型コロナウイルスの災害支援金は大型マートの華やかなショーウィンドウを見守らなければならなかった市場の商人たちにとっては、人生逆転を狙うチャンスだったはずだ。

    今こそ、町内の人情が何なのか見せてくれる時だという話だ。新型コロナウイルスに疲れた人が訪れる店舗、売場を訪れる人がいなくてため息ばかりつく顔で迎えてはいけない。わずかな支援金の入ったカードを持ってきたお客さんにお世辞を言ったり、お母さんの手を握ってきた子どもたちにプレゼントを配る用意すればもっといいだろう。

    今がチャンスだが、いざ様相は想像とは違う方向へ進んでいる。

    心の片隅に潜んでいた欲が自分をそそのかす。
    「値札を変えろ」
    「今がチャンスだ、 今稼がなければいつ稼ぐんだ?」
    「ただで、もらったお金だから、少し高くてもあまり文句は言わないだろう。どうせ8月までに使わなければなくなる」

    豆腐の値段も上がってカレイの値札も変わって総菜屋のおかずも急に高くなった。

    「3か月だけ商売する気か?」

    デパートや大型マートとは違う町内商圏の味を見せる機会が切なく消えてしまうのではないかと心配になる。
  • Lim, Chul | 入力 2020-05-08 00:00:00