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「最低賃金1万ウォン」のパラドックス


◆ 最低賃金1万ウォンのパラドックス ◆

  • 「最低賃金1万ウォン」のパラドックス
「最低賃金1万ウォンがすぐさま来年に実現されるわけでもないのに、いまからこうまでしますか」

先週、大田市屯山洞(トンサンドン)所在のあるアパートのエレベーターに張り紙がされるやいなや、アパートの住民のあいだで論争が熱く行われた。アパートの入居者代表会議側が文在寅(ムン・ヂェイン)政府の「最低賃金1万ウォン時代」公約の実現を控えて人件費の急上昇を懸念し、高画質CCTVと遮断器などの無人警備システムを導入して、現在は30人の警備員のうち14人を解雇することにしたからだ。

入居者代表会議会側は、「年間の人件費3億ウォンを削減できる」とし、住民に無人警備システムの導入効果を説明した。

しかし一部のアパート住民が警備員の解雇方針に反発して、張り紙を通じて「最低賃金が来年すぐに上がるわけでもなく、1万ウォンまで上がるのかはなってみて判ること」だとし、「疲れる業務を行う方々の賃金を上げようというのに、(逆に)がけっぷちに追いつめている」と批判した。

けっきょく住民らは賛否投票を通じて、警備員を解雇するかどうかを最終決定することにした。

21日、毎日経済新聞が産業界とアパート団地・大学街などの雇用現場を取材した結果、低所得層のための最低賃金引き上げの議論は、すでに低賃金労働者の解雇という「ブーメラン」になって戻ってきていた。

ムン大統領は大統領選挙当時、現在の1時間当たり6470ウォンの最低賃金を、2020年までに1万ウォン水準に引き上げると公約した。民主労総などの労働界はここからさらに一歩を進め、来年から「時給1万ウォン時代」を開く必要があると主張している。

しかし大田市屯山洞のアパートのように自動化システムを導入し、労働者の雇用を奪う事例が相次いでいる。 「乙(経済的弱者)」の収入を上げようとする政策が「乙」の雇用を失わせる逆説が展開しているわけだ。

大統領選挙前だった昨年の4月、ソウル大学は冠岳キャンパス25棟の建物に警備員の代わりにCCTVとセンサーなどを含む無人統合警備システムを導入し、警備員の新規採用を停止した。

ソウル大側は「ほとんどが50代の警備員を解雇する代わりに、定年退職で自然減少するまで待つことにした」と説明した。世論を意識して、警備員20人を解雇せずに他の業務を任せたものの、長期的には雇用減少は避けられない。

自動化・無人化の波は警備の雇用だけを侵犯しているわけではない。今年の初め、国内の代表的な弁当フランチャイズである「ハンソ弁当」は、無人販売システムを初めて導入した。

ハンソ弁当の新村延世路店(約68坪、227平方メートル)は最近、無人販売機2基を導入した後、しばらくして3基がさらに設置された。これによって、以前はピーク時に4~5人が動員されたカウンターの計算業務は、現在は1~2人に減った。ハンソ弁当の関係者は、「新政府に入って賃金上昇圧力が大きくなった状況で、加盟店主の要請が大きい」とし、「私たちだけでなく、他の企業もカウンター業務程度はいまやキオスク(自動販売機)に置き換えることが大勢になりつつある」と語った。

最低賃金引き上げの被害が社会的弱者に集中することがあるということは、学問的にも立証されている。

ソウル大学経済学部のイ・ヂョンミン教授は、「最低賃金が1%上昇すると、雇用は週44時間の仕事を基本に約0.14%減少することが分かった」とし、「最低賃金引き上げの負の雇用効果は女性や高卒以下、5~29人の企業などの脆弱層で大きく現れる傾向がある」と語った。

専門家によると、最低賃金の引き上げは人件費の上昇をもたらし、雇用縮小につながるしかない。警備員の解雇を推進した屯山洞アパートも、人件費の上昇に大きな負担を感じたことが分かった。毎日経済新聞がこのアパート管理費の支出内訳を分析した結果、公共管理費が2012年から4年間で約54%増加する間に、警備コストはなんと61.3%も増加した。人件費が上昇して管理費も上昇し、住民の苦情が大きくなったうえに、新政府発足後の「最低時給1万ウォン」公論化で、来年度の賃金上昇圧力がさらに激しくなるやいなや、けっきょく解雇の「剣」を選ぶしかなかったというものだ。

警備業界の構造を見ても、雇用人員が減る傾向は顕著だ。最近、警察は施設警備会社の許可時に警備基準を従来の20人から5人に緩和する内容の警備業法改正を進めている。現在、警備会社全体のうち66%は配置人員を10人未満で運営している。このような現実に合わせて、人材5人だけを備えても施設警備を行えるように許可するためだ。

特にフランチャイズ業界では新政府の発足後、急激な賃金上昇の懸念で無人システム化と人員削減が大勢となっている。

マクドナルドは現在、無人注文システム「キオスク」を総184店舗で運営している。昨年6月はキオスクの導入された店舗は52店に過ぎなかったが、1年ぶりに3.5倍に増えた。今年中に全体店舗の56%に達する250店にキオスクを導入するというのがマクドナルド側の立場だ。

米マクドナルド前最高経営責任者(CEO)のエド・レンシ(Ed Rensi)氏は昨年、米国で時間7.25ドル(2016年基準)レベルの時給を15ドルに引き上げを求める圧力が大きくなるや、「時給15ドルをよこせというなら3万5000ドルのロボットアームを買うほうが安い」と対立したこともあった。実際、マクドナルドの競合ブランドのバーガーキングは、ハンバーガーの製造プロセスの自動化のための準備に着手した。

ロッテリアも2014年からキオスクを導入し、2015年に78店、2016年には349店に大幅に増やしていった。去る5月の時点で、全1350店舗の約30%に達する555店以上の店舗でキオスク注文を受けている。バーガーキングも現在、100店舗でセルフオーダーシステムを運営している。

大学生のアルバイト雇用「1番地」格のコンビニも例外ではない。

セブン-イレブンは最近、蚕室ロッテワールドタワーの最尖端コンビニ「セブン-イレブンシグネチャ」をオープンした。ここにはロッテ情報通信が開発した無人レジが置かれている。ベルトコンベアに商品をのせるだけで、商品のバーコードの位置に関係なくクレジットカード決済が行われる。 イーマートのコンビニ「ウィズミー」も3月にスターフィールドCOEX MALL店で初めてセルフレジを試験的に設置した。
  • 毎日経済 イム・ヒョンヂュン記者/イ・ヒス記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2017-06-21 20:18:04




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