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[ルーザーの反乱] 「ルーザーの乱」その後…変わり行く「ルーザー」の位相

ルーザーの反乱②/③ 

  • [ルーザーの反乱] 「ルーザーの乱」その後…変わり行く「ルーザー」の位相
  • < 「美女たちのおしゃべり」の1シーン >

韓国ではじめて「ルーザー」という単語を流行させた「ルーザーの乱」を覚えているだろうか。当時の「ルーザー」と今の「ルーザー」、多くの部分で扱いが変わった。

2009年、「ルーザーの乱」はKBS2『美女たちのおしゃべり』にて、ある女子大生が「身長170センチ以下の男性は『ルーザー』」だと話したことから始まった事件だ。この女子大生の発言は、西洋圏で使用される「ルーザー」の意味、つまり「敗者」、「失敗した人間」と受け取られて数多くの男性たちから反感を買った。当時、この発言で「精神的被害」を受けたと病院に向かった人々も少なくなかったという逸話は、発言が引き起こした社会的波紋を間接的に表している。

その後『美女たちのおしゃべり』は放送通信審議委員会(以下、放審委)から「制作陣に対する懲戒」を受け、このプログラムの制作陣は公開謝罪文を出さねばならなかった。これまで女性たちの誤った男性観、結婚観などをテーマにして指摘を受けた『美女たちのおしゃべり』はこの事件によって下り坂を歩み、大改編でも雰囲気を転換することができず、ついには番組終了となった。この女子大生は当時、ネチズンたちの想像を超える集中砲撃を受け、現在でも「大企業に就職したが、殺到する抗議メールで、最終的に切られたらしい」という噂が流れるほどに話題となっている。

どちらにせよ、この事件により韓国にも「ルーザー」という単語が上陸した。はじめ「ルーザー」は『美女たちのおしゃべり』の影響により外見卑下の意味を持つ否定的な単語として認識された。しかし、これまでの卑俗語がそうであったように、「ルーザー」も流行語のように広まって頻繁に使用されながらその意味が中和される過程を経る。特に、「ルーザー」は社会的な問題とされる88万ウォン世代、「サムポ(三放)世代」、「青年失業」など20代の苦しみと絡まって「ニート」、「インヨ」、「二太白(イテベク:二十代の大半が職業難であることを比ゆした言葉)」などの単語のように社会的な意味を含むようになった。

しかし、「ルーザー」たちが大衆文化界のキーワードとなったのは最近の出来事ではない。グループ、「チャン・ギハと顔たち」が登場して「ルーザー文化」はひとつのサブカルチャーとされるようになった。しかし、「チャン・ギハ現象」と呼ばれるこの「ルーザー文化」は現在の「ルーザー」とは少し違ったパターンに続く。2008年にデビューしたチャン・ギハと顔たちの最初のアルバム『格安コーヒー』を事例にすることができる。

チャン・ギハと顔たちの歌は「じめじめとしたビニールマット」に横になり「残ったものもない空っぽの自分」が「倒れるほどに見慣れたこと」という状況を描写する歌詞(『格安コーヒー』)では不安を表現したりもするが、「ゆっくり生きる」、「余裕な」姿を比ゆしながらも、「早く行く」風潮に対する拒否感を内在していたりする。つまり、相手を卑下する単語だった「ルーザー」を自分自身を表現する単語にし、これを既存文化を拒否する代案文化のキーワードにしたのだ。

2010~2011年度のウェブトゥーン界を襲った「ルーザーウェブトゥーン」熱風も似た事例を挙げる。キム・ギュサムの「安いです 千里馬マート」、ハ・イルグォンの「沐浴の加味」、イ・マルニョンの「イ・マルニョンシリーズ」などのウェブトゥーンは、左遷された社長とどこか不足した社員たち、借金の督促に追われる銭湯の垢すり(銭湯管理者)に就職した専門代卒業のフリーターのような「ルーザー」たちが主人公として登場する。このようなルーザーウェブトゥーンは「くだらなさ」と結合して「愉快なルーザー」の感性を作り出した。このような「ルーザー」たちは、自分だけの世界を作り出し、既成世代の秩序、無意味で終わらない競走を脱皮する姿で読者に痛快さを抱かせたりもした。

競争社会、忙しく生きる社会の代案文化として広がった「ルーザー」は、一方で社会構造の中の問題を風刺する単語という面もある。大衆文化の中から「ルーザー文化」が人束で作られるその時期に、社会的には「ルーザー」という単語が学閥構造、体格や外見のような個人の要素がすべて商品化されていく社会構造から押し出された青年たちの状況を代弁する代表的な単語となった。

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  • < tvNドラマ「未生」ポスター >

学歴が中心となった学閥社会は、エリートたちを大企業に安定的に雇用してやることができるときにその機能を行う。しかし、IMF事態以降、この学歴大勢は絶えず危機に瀕し、自然と危機は熾烈な競争を呼び起こした。今の2030世代は既成世代には「政治意識がない」、「覇気とロマンがない」という評価を受け、下からは競争体制にそれなりの秩序と方法を講じた世代がのし上がってくる「四面楚歌」の世代だ。「席」は少しずつ減り、競争に終わりはない。このような状況で今の2030世代が劣等感に苛まれることは、ある意味当然だ。

このような2030世代の自画像を盛り込んだのが現在の「ルーザー」というキーワードだ。tvN『超人時代』のビョンジェ、チャンファン、イギョンのように、いつも就業に失敗し、そのためやすやすとは恋愛もできず、ウォルセ(家賃)の部屋を転々として負債に悩まされる。BIGBANGの曲『LOOSER』にも「一人ぼっち、強いふりした弱虫」という歌詞が登場する。tvNドラマ『未生』のチャン・グレ(イム・シワン扮)はこうして孤軍奮闘したが、ついには正規職への転換に失敗した。このような「ルーザー」が主人公となり、現在の若者たちを応援したりも、代わりに痛みを表したりもして共感を引き出す要素となった。

韓国の「ルーザー」の歴史を垣間見れば、始まりは否定的だった。相手を卑下し、見下す単語だった「ルーザー」は多様な意味を含みこととなり、現在ではときには「自分が生きたいように生きる」という主張を盛り込んでもおり、ときには終わりのない競争に疲れた互いに向かう慰労を意味する単語となった。今の若者世代は、自らを「ルーザー」と呼んで別の「ルーザー」との絆を形成するなど、過去とは違う姿で「ルーザー」を受け入れている。

<参考>
▶ 東アジアルーザー文化の警報(文ユン・ヨンド、提供 東アジア研究所、2015.03)
▶ ルーザー文化の顔(文チェ・ジソン、提供 今日の文芸批評2010春号)
▶ ルーザーは「世界の中の自分」をどのように認識するのか(文ハン・ユンヒョン、提供 黄海文化2009秋号)
  • MBNスターユ・ジヘ記者/写真=「美女たちのおしゃべり」キャプチャー、CJ E&M提供 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-06-02 13:04:35




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