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済州島の野良猫から雑誌のモデルになるまで…ヒクの猫生逆転ストーリー


全身を包んだ真っ白な毛とピンと立った耳、ふっくらとした頬。

キュートな外見と相反する高慢な表情で視線を集めるこの猫は、雑誌『Bigissue』171号の表紙モデルだ。『Bigissue』はホームレスの自立を支援する雑誌で、2010年の創刊以来これまで数多くのスターたちがボランティアとして参加して表紙モデルになってきた。しかし、今月は猫がその場に陣取った。動物が表紙モデルになるのは『Bigissueコリア』創刊以来初めてのことだ。

モデルに抜擢された猫は「ヒク」とインスタグラムで11万人のフォロワーを所有するSNSスターだ。じっと座っている写真でも「いいね」1万個を軽くもらうほど猫好きの間では有名アイドルグループに劣らない人気を誇っている。ヒクの日常を描いたエッセイ『ヒクの家』は出版してから1カ月で5版を刷っており、教保文科とアラジンで一週間以上総合販売1位を記録した。

  • 済州島の野良猫から雑誌のモデルになるまで…ヒクの猫生逆転ストーリー
  • 雑誌『Bigissue』171号の表紙モデルになったヒク [写真:イ・シナさん提供]

今はネットユーザーたちの愛を受けて幸せな日々を送っているが、3年前まではヒクは主人のない済州島の野良猫だった。あちこちを転々としながら延命してきたが民宿を運営するイ・シナさん(31)に発見され、新しい人生を始めた。ペットに興味すらなかったイさんが「ヒク父さん」を自任して捨てられた動物のためのキャンペーンの先頭に立っようになった理由は何だったのだろうか。危険な道路から居心地の良い家に足を踏みいれるまで順調ではない道を生きていたヒクとヒクの生活を180度変えた伴侶であるイさんの話を聞いてみた。

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  • 野良猫時代のヒク [写真:イ・シナさん提供]

- オンラインでヒクの人気がすごい。人気の秘訣はあるのか。

▷ ほとんど家でヒクと時間を過ごしている。一日中一緒に過ごしているため自然な姿を捉える機会が多く、SNSに写真を一つ二つ投稿し始めた。フォロワーの方はヒクがリラックスしている姿を好んで下さるようだ。

- ヒクと初めて会ったエピソードが気になる。

▷ 民泊をオープンする前にゲストハウスで仕事をしていた。2014年6月頃、掃除をしていると白猫が通り過ぎた。最初はどこかの飼い猫が外出したのだと考えて気にしなかった。ところが次の日も、その次の日も続けて目に入ってきた。気になって餌をあげると、慎重に近づいてきて食べた。よく見ると耳はカビで覆われて脱毛しており、体はげっそりと痩せていた。少なくとも1カ月以上は放置されたように見えた。一度もペットを育てたことがなかったため連れて行くつもりはなく、半年間、餌だけをあげていた。

- どうして飼うことにしたのか。

▷ある日ヒクが行方不明になった。一日も欠かさず毎日餌を食べに来ていたのに、20日間姿をみせず、悪い予感までした。行方不明になってから21日目、耳端が破れて爪が抜けた状態で私を訪ねてきた。治療をしてあげた後、新しい飼い主のもとへ送るためにあちこち調べてみたが、捨て猫であるうえに年齢も少なくないため引き取り手がなかなか見つからなかった。そうしている間にも情がたくさん移り、私が責任をとろうと考えた。毛の色が白いため「ヒク」と名前を付けた。

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  • ヒクとイ・シナさん(31)[写真:イ・シナさん提供]

- これまで捨てられた動物を助ける様々なキャンペーンに参加した。ヒクと過ごしてから関心が生じたのか。

▷そうだ。恥ずかしいことにヒクを育てる前にはペットをペットショップでのみ購入するのだと考えていた。しかし、ヒクのおかげで捨てられた動物の深刻さを実感した。特に済州島で過ごす捨てられたペットたちが気になった。済州島は陸地より捨てられた動物を保護する環境が不足しており劣悪​だ。ここで5年以上住んでいるが捨てられた犬がこれほどに多い島だとは思わなかった。特に休暇の季節が過ぎると犬や猫の数が多くなる。捨てられた動物ほどにあちこちで虐待される動物も多い。この動物たちが少しでも楽になる道を願った。

- どのようなプロジェクトに参加したのか。

▷主に商品を企画して販売した収益金を寄付することで支援してきた。デザインされた商品は個人が一人で企画するのは難しいので関連する企業とともにした。ペットの手作りおやつ会社「バイトミー」と一緒にバッジを作って南楊州の遺棄動物シェルターに収益金を全額寄付した。また、昨年4カ月間、一時的に保護して治療してあげた捨て犬「キム・シン」の刺繍を入れたハンカチを作った。ストアファームを開いて直接販売と配送をし、収益金の全額を済州捨て犬センター「済州動物の友」に寄付した。直接作ったもので400万ウォンという少なくない金額を寄付することができ、胸がいっぱいだった。

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  • [写真:イ・シナさん提供]

- ヒクに会う前の人生と大きく変わったように思える。

▷ヒクに会う前に私が感じることのできる感情が5個であったならヒクと会ってから10個に増えたと言えるほどに感情が豊かなり、幸せになった。実際には幼かった頃、毎晩家に帰るのが嫌いで玄関の前をうろうろしていた。それほど幸せではない環境で育って「誰かを愛することができるだろうか」「私は果たしてよい家庭を築けるだろうか」と考えていた。しかし、ヒクと暮らしながら私も暖かい家庭を持つことができる人だということが分かった。ヒクからもらった愛を、別の「ヒクたち」に返してあげたかった。一人で生き残るのではなく、道の上の動物と共存する方法を探したのだ。

- 「ヒク父さん」として目標があるなら。

▷ヒクが私に会ったように、他の動物も飼い主に出会って愛されるように支援するのが夢だ。現在、ヒクの写真がプリントされたパノラマのはがきを準備中だ。収益金全額は済州島の捨てられた動物のために使われる予定だ。エッセイ集の精算が完了したら著者印税も済州動物の友に一部送る考えだ。私にできることを通じて「ペットショップで買わずに里親になってください」「捨てないでください」というメッセージを長く伝えていきたい。
  • 毎日経済 デジタルニュース局 イ・ユヒョン インターン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2018-01-21 05:38:01




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