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甘い味に執着する脳の回路…食品中毒の治療も可能になるか


  • 甘い味に執着する脳の回路…食品中毒の治療も可能になるか
しばらく前にカフェで一人でコーヒーを飲みながら本を読んでいたところ、意図せず隣の席の人の話を聞くことになった。30歳ほどの女性が言うには、ある日、職場でひどいストレスを受けて退勤後に宅配ピザを1枚たのんで一人で全部食べたというのだ。気がついたら胃がもたれていて、食べたものをすべて吐いたという。「そんなことを繰り返したらいけない…」。なぜか心配になって「もし間違ったら、食品中毒、つまり強迫性の過食症になることもある」と話してあげたかった。

20世紀後半から食べ物が豊かになり、過体重と肥満の人が急増している。脳の報酬回路(私たちに快感を感じさせてくれる領域)を刺激する薬物や行為を繰り返して接したり行っていると、ある瞬間に強迫性のものとなり、それができない場合は渇望に苦しめられて禁断症状を見せたりもする。過体重と肥満の人たちの多くは食品に依存して中毒になっているのだ。

食品中毒は、薬物中毒や行動の中毒とはまた違う。喫煙やオンラインゲームは途中でやめても生きる上で支障がないが、食べることをやめれば飢えて死ぬ。一般的な中毒を治療する方法(例えば対象に対する嫌悪感を感じさせる認知治療)をそのまま食品中毒に適用すると、拒食症という正反対の摂食障害を招く恐れがある。したがって、科学者らは食品中毒を治療しながらも、正常な食欲はそのままにする方法を探してきた。

学術誌『Cell』の1月29日付には、このような治療法を実現できる発見を盛り込んだ論文2本が並んで掲載された。脳の報酬回路で食品中毒にだけ関与するニューロン(神経細胞)を発見したものだ。研究者たちはマウスを対象にした実験を通じて脳の外側視床下部から腹側被蓋野(VTA)に信号を送るニューロンが活性化されると食品中毒の症状を見せるという事実を発見した。

動物を対象にどのように中毒の実験をするのか。中毒の特徴は不利益やリスクがあっても喜んで甘受して追求するという点だ。反復学習により砂糖水中毒になったマウスは、腹がいっぱいても檻の片隅にある水筒に入った砂糖水を飲むために電気が流れている(もちろん感電して死ぬほどではない)床を通る。一方、まだ中毒になっていないマウスは一度や二度の経験で水筒に砂糖水があることを知っていても、初めの一歩を踏み出して感電すれば、びっくりして再び行こうとはしない。

もしこのニューロンが作動しなくなれば、食べ物自体に対する欲求が消えるのではないか。研究者は、このニューロンが食品中毒にだけ関与するということを実証するために、しばらくの間、餌を与えていない空腹状態のマウスを対象に、ニューロンの活動を抑制した後の食餌行動を観察した。その結果、これらのマウスは活動を抑制していないマウスと同様に、餌をよく食べた。ニューロンの活性化有無が正常な食餌行動に影響を与えないことを知ることができる。

脳の報酬回路は、生存と直結されている原初的な領域だ。したがって、動物実験の結果が人間においても再現される可能性が高い。つまり、マウスの食品中毒回路にだけ影響を与える薬物を探せば、強迫性の過食症を治療するのに転機が設けられる可能性がある。
  • 毎経エコノミー第1794号(2015.02.04〜02.10日付)ガン・ソクギ科学の専門家/イラスト=チョン・ユンジョン
  • 入力 2015-02-09 07:08:12




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