A. | 大宇造船が日本のスズキの技術を投入して造った車なのですが、この車にまつわる話は本当に多くあります。良い意味では、大韓民国で初の軽自動車で、誰でも買うことができる国民車というイメージもありましたが、ほとんどはからかいの対象でした。 インターネットの掲示板にティコ関連のエピソードがシリーズで出回るほどでした。ティコは赤と白の2モデルが主力でしたが、冗談が好きな人は、赤ティコはカクテギ、白いティコは角砂糖というニックネームを付けて呼びました。ティコの運転手が聞けばちょっと残酷な冗談でしょう。 ティコを嘲笑にしたジョークは無限にありますが、そのうちのひとつを紹介しましょう。 国道を走っていた角砂糖(白いティコ)が道路のガムを踏んで突然止まってしまった。後に続いていたグレンジャーが追突して接触事故が起こった。グレンジャーは傷一つなかったが、ティコはへこんでしまった。 グレンジャーの運転手が取るに足りないというように、一言だけ言って消えた。 「排気筒に向かって、強く息を吹いてみたらどうですか。膨らむでしょう」 ティコの運転手が腹に力をいれて吹いてみたものの、変形した車が元通りになることはなかった。 一人で必死になっていたところに、通りすがりのカクテギ(赤いティコ)が一言助言をした。 「窓が開いているから空気が漏れるんですよ。窓を閉めてやってみてはどうですか」 軽自動車に乗っていると、このような嘲笑を受けるため、人気が出ないのは当然でしょう。 韓国に長い間米軍が駐留していて、米国で勉強をしてきた人が社会の指導層にいるためか、米国の影響が様々な分野に広がっています。その中の一つが交通に関する政策と社会文化です。 広々とした陸地を誇る米国は、鉄道より道路を中心に公共交通機関が発達し、広い道路を走るのに適した大型車を好みますが、そのような風習はそのまま韓国に流入ました。京釜高速鉄道を建設する際にも、そのお金で京釜高速道路をもう一つ作るほうが正しいという主張が絶えず提起されました。 韓国人が中・大型車を好むのは米国を真似したからだけとも言えません。小さくて見栄えのしない国産の軽自動車に乗ると、車なしでバスやタクシーを利用する人よりもひどい扱いを受けることになります。実際に2009年に未婚男女1322人を対象にした調査で、「最初のデートの時に男性が国産の軽自動車に乗ってきたら、恥ずかしくて車に乗りたくない」という回答がなんと84.3%を占めたほどでした。 最近では、あまり見かけませんが、官公署はもちろん、デパートやサービス店でもティコに乗って行くと蔑視を受けるほどだったそうです。道路上でも軽自動車はいじめられっ子でした。軽自動車を運転する人には主婦が圧倒的に多かったため、速度が遅いからとクラクションをならしたり、むやみに割り込むなどの横暴をされることが常だったそうです。 それでも最近の軽自動車の状況は大幅に良くなりました。軽自動車天国の日本とは比較できないですが、ガソリン代が急騰した後、ガソリンを余り必要としない車を利用するようになったうえに、特別消費税の免除などの各種特典が与えられたため、2007年からは新たに購入する車のうち、軽自動車の割合が15~25%を占めるほど大きくなりました。 韓国の自動車登録台数は、2014年10月30日に2000万台を超えましたが、この日の基準で軽自動車は160万台と集計されました。全体の8%ほどになるわけですね。 まだ韓国で生産されている軽自動車の車種は多くありません。日本ではこれまで90種以上の軽自動車が発売されたそうですが、韓国で発売された軽自動車は製造が中止されたものまで合わせても9種しかありません。 現在生産されている軽自動車は、起亜自動車のモーニングとレイ、韓国GMのシボレースパーク、ダマス、ラボなどの5種です。ベンツ系の2人乗り「スマートフォーツー」が唯一の輸入軽自動車ですが、日本産の軽自動車は売れるという保証がないため、輸入がほとんどされない状況です。釜山などでたまに見かける日本の軽自動車はハンドルが右側に付いた日本国内用の車だそうです。 ☞ 韓国と日本の軽自動車の基準は少し異なっている。日本の軽自動車の基準は排気量660cc(64馬力)で長さ3400㎜、幅1480㎜、高さ2000㎜以下だが、韓国は排気量1000cc以下、長さ3600㎜、幅1600㎜、高さ2000㎜と、日本より基準が少し大きめだ。ヨーロッパでは長さだけ3500㎜に合わせれば、他は不問だそうだ。 ☞ 韓国で軽自動車に与えられるメリット ・特別消費税の免除 ・自動車税1cc当たり80ウォン ・責任保険料の10%割引 ・登録税と取得税免除(2004年1月軽自動車支援法改正:既存では登録税と取得税2%割引) ・地域開発公債4%割引 ・高速道路通行料およびその他の有料道路50%割引 ・公営駐車場50%割引 ・地下鉄乗り換え駐車場80%割引 ・車両の強制10部制から除外 ・軽自動車サランカード発行時にリッター当たり250ウォン、油類税割引(ただし、1世帯1車両に限定) |