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こんなオーナーがいることも忘れないで


  • こんなオーナーがいることも忘れないで
  • < 東洋ピストンのホン・スンギョム会長 >

「娘を失った父親の心情を私が理解することはできませんが…」

ファン・インヨルさん(51)は、セウォル号惨事のときに娘を失った。娘が無事生還するだろうという期待を抱いて珍島パンモク港に留まらなくてはならなかった彼は、通っていた会社に辞表を出した。オーナーから「あなたの切ない心をすべて計り知ることはできないが、会社のことは心配せずに娘を見つけた後に話をしよう」という回答が帰ってきた。辞表は返され、給与も支給され続けた。

去る10月29日、惨事発生から103日目にして、ファン氏の娘であるジヨンさん(18)の遺体が家族のもとに帰ってきた。ジヨンさんの誕生日だった。去る8日から、インターネットコミュニティとSNSなどを通じて話題になったこの物語の主人公は、東洋ピストンのホン・スンギョム会長だ。

自動車部品メーカーである東洋ピストンは先月30日、毎日経済の紙面を介して「働きやすい根企業」(根企業:製造業において製品の性能や品質を左右する基盤となる分野を担っている企業)として紹介されたことがある。 過去5年間の会社の離職率は0.5%に過ぎない。全従業員に子供の大学の学費支援を行うなど、大企業に負けない福祉の恩恵を提供し、KIKO事態の時に売上高が半減したにもかかわらず構造調整を行わなかった。「従業員の競争力が、まさに会社の競争力」というのがホン会長の信条だった。

セウォル号行方不明者家族対策委員のチョン・ミョンソン委員長は「セウォル号の遺族の中で、会社側から退職勧奨を受けて辞職した方が少なくない」と伝えた。本人が「申し訳なくて」自ら辞めた事例も多いとした。

大韓航空の趙亮鎬(チョ・ヒョナ)前副社長の「ピーナッツリターン」により、国内はもちろん、国外まで騒ぎ立てている。あらゆるパロディがあふれ出てきたかと思ったら、「オーナー3・4世リスク」が他の企業へも警戒心を与えている。直撃を受けたのは大韓航空の一か所だが、最小限の共感能力さえない帝王的オーナーシップが財界全体の問題として批判の俎上に載せられた。

韓国すべての企業のオーナーがホン会長と同じであることを望むことはできないだろう。しかし、このようなオーナーシップも存在するということは、チョ・ヒョナ波紋により「オーナーの僕」という会社員の悲哀を噛みしめて、苦い思いをしている私たちにとっては希望だ。

ホン会長は「当たり前のことをしただけなのに、前に出てスポットライトを浴びたくない」とし、インタビューを最後まで断った。
  • 毎日経済オピニオン部 ホン・ソンユン記者/写真=毎経DB | (C) mk.co.kr
  • 入力 2014-12-12 15:58:16




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