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[コラム] ソン・ワンジョン、お金で買えないもの

死んだソン・ワンジョンが結局生きているイ・ワング首相を追い出した 

死んだソン・ワンジョン前京南企業会長は結局、生きているイ・ワング首相を追い出してしまった。いわゆる「恨みのリスト8人」のうち、誰が次のターゲットになるのかについて注目が集まるだろう。しかし、事件の進展をこんな興行モノのように扱われては、韓国の政治・経済が発展できない。セウォル号沈没によって304人が犠牲になったように「ソン・ワンジョン事件」の核心は、京南企業の沈没だ。会社が堅実に経営されていれば、彼が政権の実力者に何かを願ったりはしないはずであり、死ぬこともなかった。会社の上場が廃止され、法定管理によって所有権が変わり、希望が消えて行ってしまったのだ。それゆえ、最終的に不渡りに至るまでの京南企業の10年余りにわたる経営の過誤、これまでのソン・ワンジョン前会長の行跡が鍵だ。彼がたった1000ウォンからはじめて、大亞建設(1982年)、京南企業を買収した2003年までに稼いだお金の背景は98%が官給工事だった。高位層との人脈を作って、官(公共)工事を獲得することには天才級の才能を持っていたようだ。

京南企業を買収した後、企業が大きくなれば、世界を相手にした競争力を育てなければならないが、彼の経営方式はロビー商売を抜け出せなかったようだ。京南企業を買収した年の売上高は4889億ウォン、6年後の2008年は1兆7624億ウォンに急騰する。世界金融危機が発生したその年だ。「そこまででした。金融危機以降、急速に厳しくなり、ベトナムのランドマーク72工事に1兆2000億ウォンを投入して無理をしたのが決定打でした」。京南企業の関係者の話だ。彼によると、京南企業の事業は、官給工事と海外工事で構成されたという。官給工事は地下鉄などであり、海外はベトナム、スリランカ、アルジェリア、エチオピアのような貧しい国の下請け工事だった。「一言でお金にならない事業だけでした。経営の不健全さの累積です」。ある銀行の会長は「会社が付加価値の高い工事を獲得する実力がなかった。オーナーがその部分に対して疎かだった」と指摘した。

ソン・ワンジョン元会長は、国会議員になろうと、2004年から三浪までして政界進出に没頭した。ソン元会長は盧武鉉(ノ・ ムヒョン)政府の時に犯罪行為による裁判途中、2回も特別赦免を受けた。朴槿恵(パク・クネ)政府で、財界ランキング3位のSKグループ崔泰源(チェ・テウォン)会長が仮釈放も受けることができずにいることに比べれば、すごい背景だ。どんな力が作用したのか明らかにしなければならない。京南企業もワークアウトに2度も入って莫大な支援を受け取った。ソン元会長と会社は法と秩序の上を行った。お金があれば、できないことはないと言いながら。

ついに国会議員に当選した翌年2013年度も京南企業は3396億ウォンの赤字を出した。売上高はわずか7492億ウォン。このような営業構造を持つ企業は、皇帝でも生かすことはできない。自由先進党がセヌリ党と統合して常任委員会を政務委員会に割り当ててくれと駄々をこねて、目的を達成した。政務委員会は、金融監督院や銀行などのスーパー甲(優位な立場の者)で、かれらに圧迫を加えて2次ワークアウトの時、融資金6300億ウォンを受け取った。なぜここまで必死に政治にこだわったのか、ここから分かるのではないだろうか。経営状況の悪化した企業のオーナーが、会社が崩れる状況において、見えるものは何もなかったことだろう。

羽振りのよい人物を京南企業を生かすことに総動員した。「親朴」勢力が受け取ったとされるお金は、金融負債の1兆3000億ウォンに比べると小銭だ。株は紙切れになってしまい、京南企業の従業員900人の生計は先が見えない。それにもかかわらず世論の照明は、どこを照らしているだろうか。大統領の赦免2回、ワークアウト2回、経営が不健全な企業の所有者に国会議員の公薦(公認)、政務委の割り当て、このようなものを明らかにすることが「ソン・ワンジョン事件」の本質であるべきだ。

マイケル・サンデル教授の言葉のとおり「お金で買えないもの」を取引すると、社会が、国家がぐらつく。技術がなくて滅びていく企業を会社のお金を抜き出して、生かすことはできない。立志伝的な幅広い人脈と、彼を助けた黒い手は、韓国の貴重な秩序と価値を安値で取引した。であるにも関わらず、記録には京南企業の没落による多数の被害に対する申し訳なさなどなく、自分が政治的に李完九(イ・ワング)よりもさらに上になりそうだから嫉妬しているだとか、悔しいだとか、一体何を言っているのか。

企業と政治家は、志向するところが違う。企業は創造的破壊が本業であり、政治家は国民の統合が目標だ。鄭周永(チョン・ ジュヨン)親子や米国のロスペローのように、大権を取るために瞬間的に浮上する場合はあった。しかし、経営のうまくいっていない企業のオーナーを国会議員にしたことは養虎遺患だ。会社の金を抜き出して、権力を汚染させて世界をひっくり返すというものだ。ここから韓国の政治、経済は教訓を得なければならない。これがソン・ワンジョン事件の真実だ。
  • 毎日経済_キム・セヒョン主筆 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-04-21 17:24:50




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