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[コラム] 政界版「お姉さん、私のこと気に入らないでしょ」


国会議員が暴言を吐いたと物議を醸している。新政治民主連合の最高委員であるチョン・チョンレ(鄭清来)議員が主人公だ。

チョン議員はもともとストレートな物言いで、厳しい視線を受けてきた人物だ。彼の毒舌の対象は与野党を選ばない。巨大メディアにも体一つで盾突く。有力な先輩政治家の後援も派閥もなく、SNSを通じた民心とのコミュニケーションを武器に政界に飛び込んだためか、政治を舞台にした孤独な剣客のようでもある。

彼が発した言葉は、文字通り、「寸鉄人を殺す」の境地だ。剣よりも鋭い舌、言葉の中で斧を振り回す。国家情報院の大統領選挙介入論争が起こると、朴槿惠(パク・クネ)大統領に向かって直球を飛ばし、後任の首相に指名された黄教安(ファン・ギョアン)法務長官には「狡猾な眼識をそなえた人」(韓国語で名前とかけてある)と毒舌を放ち、李承晩(リ・スンマン)大統領と朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の墓地を参拝した同党の文在寅(ムン・ジェイン)代表には「ユダヤ人がヒトラーの墓地に参拝したようなものだ」と比喩した。

彼の発言が問題になった背景には、しばらく前にあったミニ補欠選挙と関連がある。光州地域の選挙を担当した朱昇鎔(チュ・スンヨン)最高委員が選挙の責任を負って指導部が辞任しなければならないと圧迫を加えると、「辞退しないのに辞退するかのように恐喝するのが問題だ」と言ったのが発端になった。

チョン議員が党内の関係者に対する攻撃は自制して、大砲の銃口を外部に向けると公言したところだったため、問題にしようとすれば、俎上にのせることのできる発言だった。少なくとも党内の関係者の考えはそうだった。結局、チョン議員は党の倫理審判員に提訴された。前述したように、誰それかまわず放つ発言により、党の品格が落ち、来年の総選挙を控えて「しつけのなっていない政党」というイメージが生じる心配を遮断するというのが提訴した議員らの主張だ。

政界では彼の発言について、芸能界で先輩の芸能人に向かって「お姉さん、私のこと気に入らないでしょ」と発言したイェウォンを連想させるという評価さえ出ている。しかし、提訴された後、世論の行方はイェウォンとは全く異なるかたちで展開されている。イェウォンは放送局が庇おうとしたにもかかわらず、世論の叱責を受け続けている一方、チョン議員は党内の雰囲気とは異なり、世論の圧倒的な擁護を受けている。世論の推移を見守った同僚議員25人も救命に乗り出し、請願書に署名した。

ネットユーザーたちは、チョン議員より失言を理由にして刀を抜いた議員たちを非難する。無断横断したからと死刑にしようと襲い掛かるようなものだという主張も出ている。問題の発言を引き起こしたチュ・スンヨン議員がごり押しをしたからだとして、ダウムアゴラには​チョン議員を守ろうという請願書が出回った。

請願書まで出てきた背景には、ややもすると党の倫理審判員の懲戒レベルが高くなる場合、来年の選挙で公認を受けられないかもしれないという心配があるからだ。チョン議員の政治基盤がSNSにあることを改めて確認できる部分だ。

チョン議員の発言に軽率な部分がないわけではない。毒舌が政治の基盤である彼におとなしくすることを要求したところで通じそうにもない。しかし、事態を悪化させた口実を提供した責任は明らかに彼にもある。

チョン議員の発言をめぐり、改めて言葉の持つ威力を感じる。「話せば万両、沈黙すれば千両」という先人の忠告も思い出される。しかし、政治家に自分の身を守るために口を閉ざされては困ったものだ。政治家の固く閉ざされた口にも、何もしなかった責任を問うのが優先かもしれないという気もする。

現在、韓国の政局では与野党を問わず、来年の総選挙の公認の主導権を握るための力比べが行われている。政治家の目に国民の苦しい生活は見えていない。自分に公認を与える確実なカードが必要なだけだ。一人の議員の発言をめぐり起こっているのが公認権戦いの前哨戦であるような気がして、政治への幻滅が大きくなるのではないか心配だ。

  • [コラム] 政界版「お姉さん、私のこと気に入らないでしょ」
  • < チョン議員を助けようという請願書、この時点で24405人が署名している >

  • O2CNI_Lim, Chul
  • 入力 2015-05-24 08:00:00




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