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[FOCUS] 「無料」の前に弱くなる人間


消費心理の萎縮によって、おまけで商品を提供する販売方式が急増している。

ここ3年間で、「1+1」「2+1」のようなイベント商品の売上高は毎年20%ずつ増加した。それだけでなく、証券会社でも無料またはおまけマーケティングを増やしている。アマゾンのような、オンラインで購入するサイトでも条件によっては送料を無料にするサービスをマーケティング戦略として展開している。

送料無料が効果的な理由は、これが顧客の心理に影響を与えるからだ。特定の購入額を超える場合に送料が無料になること、人は自分のショッピング行動を合理化する。

「無料」ということに大きな意味を付与することによって過度な消費が発生することもある。実際にアマゾンがヨーロッパ諸国の顧客を対象に無料宅配サービスを開始したとき、ヨーロッパ諸国の中でフランスでだけミスにより無料宅配価格が0フランではなく1フランと表記されたことがある。その結果、送料無料サービスを実施していたヨーロッパ諸国での売上高は大幅に増加した一方、フランスの売上高には大きな差がなかった。

このように人には、無料が好きな無料効果(Zero Price Effect)心理がある。どんな商品であれ価格の変動幅が同じであるにもかかわらず、一方の商品が無料であれば、人は無料の商品を好むということだ。2つの商品価格が同じ割合で変わったのなら、人が得る利益も同じだ。

したがって、経済学的に計算して見たときに、2つの商品価格が一定の割合で低くなれば、両方の商品に対する人の選好度は変わらないはずだ。しかし、人は価格の変動幅が同一でも、ある商品が無料だとすると、その商品だけを好む。

無料になった商品の価値を高く考えて、それを過大評価し、急に好むようになる人間の不合理性だ。突然、無料だと言われると、人は利得を計算するため貨幣概念に換算することに混乱が起きるようになる。最終的に貨幣で計算してみると、はるかに多い利益があるにもかかわらず、もっと安かったり、あるいは無料になると、そちらに急に傾きながら合理的な判断力が鈍るためだ。

また、無料効果は人間が持つ感情と関係がある。人は何を消費するかを選択しなければならないオプションが様々にある場合、金がかからないオプションにさらに肯定的な情緒反応を示す。このような肯定的な感情反応が意思決定に影響を及ぼすことになる。最終的には、気分が良くなって、肯定的な感情が誘発されるので、計算して確認してみる行為は減り、結局、損であるにもかかわらず、このような無料を選択することになる。

無料商品は、基本的な損益を分析させるよりも、ただ気持ちの良い肯定的な感情を導き出すのだ。人間が利益とコストの計算が上手いというが、実は、このような利益とコストの分析自体は精神的なエネルギーを必要とし、その過程で否定的な感情が起こることがある。しかし、無料はそうではない。ただ気持ちがいいだけなので、人間は無料に引かれて行くものだ。

このように利得が自分に近づいてくるとき、人は判断が鈍くなり、気分が良くなるものだ。賄賂もまた同じだ。賄賂が与える「ただで得たもの(無料)」という魅力は少なくない。結局は、それ(賄賂)に引き寄せられるのだ。世界銀行(World Bank)の調査によると、全世界的に年間1兆ウォンを超す金が賄賂に使用されるという。このような巨額の賄賂は、経済的成長を妨害し、民主的・道徳的価値を脅かすにもかかわらず、人間は賄賂の前に弱くなりやすいものだ。

しかし、賄賂はただで得たもの(無料)ではない。最終的にはこれに対する莫大な費用をいつかは必ず支払わなければならないことを覚えておかなければならない。その利得だけを考えずに、支払わなければならない費用がいかに大きいかを考えなければならない。賄賂の誘惑は、意外に執拗だ。その前には、判断能力が麻痺してしまう弱い人間だ。したがって、そのような状況を最初から事前に遮断し、避けてしまうことが、もしかするとより賢明なのかもしれない。
  • ソウル大心理学科グァック・グムズ教授
  • 入力 2015-05-20 17:41:15




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