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[コラム] ソンピョンを分けて食べるソンビ夫婦


  • [コラム] ソンピョンを分けて食べるソンビ夫婦
朝鮮19代王の粛宗が暗行(身分を隠して行動すること)の途中に南山に達したときのことだ。

夜も深まったのに、どこからか朗々と本を読む声が聞こえてきて、周辺を探してみると、あばら家から聞こえてくるものだった。明かり窓の隙間から覗いてみると、夫が本を読んでいる横で若い妻が灯の下で裁縫をしている姿が目に入ってきた。

しばらく後に夫が本を閉じて、夜が深まって小腹がすいたと呟く。その言葉を聞いた新妻がそっと立って押入れの中から茶碗の蓋に入れた松餅(ソンピョン)2つを取り出して新郎に渡す。夫はおいしそうなソンピョンが嬉しかったようで、サッとひとつを食べて、残りのソンピョンも手にとる。

粛宗はふと、夫がけしからんという気がした。空腹なのは妻も同じだろうに、人情のない奴という悪口が自然に出てくる状況だった。

ところがソンビ(朝鮮時代の知識階級に属する人)は、自分が食べようとソンピョンを手に取ったのではなかった。本を読む新郎に食べさせようと断る妻に無理やりにでもソンピョンを食べさせるために手に取ったのだった。「口を開けろ」「嫌です、私はお腹が空いていません。旦那様お召し上がり下さい」「そうではなく口を開けなさい、私が食べさせてあげる」。夫婦の仲はソンピョン一つでも十分に知ることができた。

満足した粛宗は、宮に戻った後、ソンピョンを食べたいと言った。王の玉音により宮殿の厨房は非常事態となった。慌ただしくソンピョンを作った宮人らは、大きな磁器に様々なソンピョンを山のように積み上げて、前後左右から支えて待機した。

その姿を見た後、王は南山で見た夫婦の幻想が崩れた。怒りが込み上げてきた粛宗は「ソンピョンを一皿も食べろいうのか、私は豚か?!」とソンピョンの器を叩きつけた。

韓国の「大きな磁器のソンピョンは、茶碗の蓋のソンピョンほど美味しくない」ということわざはこれに由来した。

情が深ければ、ソンピョンはなくてもよい。情がなければ、秋夕(チュソク)に作るソンピョンのことを考えただけでも頭が痛くなる。世界でも珍しい、韓国型の疾患である秋夕症候群は、最終的に家族間の情が壊れながら生じた惨劇だ。

名節(秋夕や旧正月のような祝日)を控えて、ヒステリー、めまい、頭痛、貧血、消化不良、動悸、無気力に椎間板ヘルニア、変形性関節症まで同行する名節症候群は、夫の実家に行って姑の小言を聞きながら死ぬほどの量の家事をこなさなくてはいけない嫁たちが経験する症候群だったが、いつからか姑の名節症候群、夫の名節症候群、独身名節症候群、未就業者症候群、勉強できない学生症候群へと対象が全老若男女を問わずに拡大した。

名節症候群は、ただでさえ、核家族へと分化していく韓国社会を祝日にも家族や親戚から遠く離れるように強制している。秋夕を迎えてデパートは贈り物を包装するのに一時的に従業員を補充し、帰省客の両手には贈り物の包みがあるが、貧しいソンビの家の2かけらのソンピョンはない。

自分は大変で苦しくても、彼(彼女)が満腹なら満足だという犠牲が愚かな行動だと思われる世界で、2かけのソンピョンを見つけるのは難しい。
  • O2CNI_Lim, Chul / 写真=photopark.com
  • 入力 2015-09-27 08:00:00




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