トップ > コラム > 人物 > 毎日乳業の金庭完会長「ポールバセットでスターバックスを超えたい」

毎日乳業の金庭完会長「ポールバセットでスターバックスを超えたい」


  • 毎日乳業の金庭完会長「ポールバセットでスターバックスを超えたい」
△写真=全羅北道・高敞(コチャン)の農村体験型テーマパーク「上下農園」で出会ったキム・ジョンワン毎日乳業会長が農園内の建築物を指して説明している。 [写真提供=毎日乳業]

コーヒー専門店「ポールバセット」で反響を呼んでいる毎日乳業は、コーヒー市場でもう一度勝負手を上げる。

最近、全北・高敞(コチャン)の上下(サンハ)農園で毎日経済新聞と単独インタビューを行った金庭完(キム・ジョンワン)毎日乳業会長(59)は、「近いうちにポールバセットブランドをつけた缶コーヒーを販売する計画だ」と語った。

毎日乳業は来月、「ポールバセット・ハンドドリップバッグ(携帯豆コーヒー)」を発売するなど、「ポールバセット」ブランドをコーヒー市場全体に拡張していく方針だ。現在、国内のコーヒー飲料の市場規模は約1兆ウォンで、缶コーヒーが最も大きな割合を占めている。ほとんどの缶コーヒーは1000ウォン未満の低価格製品群だが、金会長はポールバセット缶コーヒーでプレミアム缶コーヒー市場を創出するという抱負を明らかにした。金会長は「私はスターバックスに必ず勝ちたい」とし、「缶コーヒーの準備もその一環だ」と語った。いま毎日乳業研究所が製品開発に着手しており、来年に発売する予定だ。価格は市場に出ている「スターバックス・ダブルショット」缶(1500ウォン)よりも高く設定する計画だ。

金庭完会長のメディアインタビューは、2010年の会長就任以来で初めてだ。長いあいだメディアから離れていた理由について、「真正性のある事業を行うには、まず適切に成功した後にゆっくりと(メディアに)知らせるべきというのが私の持論」だと説明した。

昨年の毎日乳業の売上げは1兆5421億ウォンで、金会長の就任初年度(9095億ウォン)よりも70%近く伸びた。金会長は故金福鏞(キム・ボギョン)毎日乳業創業者の長男で、1986年に毎日乳業に入社して経営授業を受け、2010年に代表取締役会長になってグループを任せられている。

コーヒー事業に情熱を注ぐ理由は、乳業界の継続した低迷からだ。酪農振興会の統計資料によると、2010年に1050トンだった国内産ミルク(粉ミルク)の在庫は、昨年末の時点で1万9995トンの20倍近くに増えた。

金会長は、「韓国の原乳受取価格はリットル当たり1100ウォンで、300~400ウォン台のヨーロッパに比べて途方もなく高い」とし、「このような奇形的な市場はいつかは転倒するしかない」と心配した。このような観点から、金会長が念頭に置いているところは「中国」だ。国内原乳市場の奇形構造が崩れると、長期的には中国を「原乳生産基地」として活用するしかないというのが金会長の忠告だ。

「(奇形的な)国内の原乳市場はいつかきっと崩れるしかなく、それが起こるとけっきょく牛乳を中国から得ることになります。この時に備えて中国に〈牛乳畑(牧場)〉を設けて、直接酪農事業を行う方法を考えているところです」。

金会長の時計は10年後に合わせられている。金会長は「私にとって1年や2年後は将来ではなく過去」だとし、「10年後の市場を見据えなければならない」と強調した。

まだ不毛地のプレミアム缶コーヒー市場を開拓していくという金会長の決意も、短期の観点から始まったものではない。 「すぐには難しく見えても、遠くをみると市場が見えます。コーヒー専門店を初めて出す時も、私に対して(競合他社から)あまりにも事業を展開しすぎるとみんな悪口を言ったけれど、今はうらやましがります。みんな新しい試みを躊躇しますが、それではだめですね」。

金会長はミックスコーヒー市場への進出計画は絶対にないと釘を刺した。 「ミックスコーヒーはやりません、その市場はすでに過去でしょう。これ以上大きくならないから…」。

去る22日にオープンした国内初の農村体験型テーマパークの「上下農園」も、金会長が2008年に描いた絵だ。頭の中の構想が実現するまでには、総8年の時間と370億ウォンが投資された。官民合同プロジェクトとして進められ、毎日乳業が270億ウォンを出して、国費・地方費100億ウォンが投入された。上下農園は農業(1次産業)と加工(2次産業)、流通・サービス・観光(3次産業)のすべてを組み合わせた、未来型「6次産業」ビジネスのための空間だ。近くの農家から供給された食材と農園内で直接育てた作物を手作り工房で加工して、ハムやパンあるいはジャムなどを作る。このプロセスを観光客にありのままに体験させながら収益を上げて、今後は品質を認められた製品を上下農園というブランドで流通させて新たな収益を創出する計画だ。 「6次産業という言葉を最初から知っていたのはありません。なんでもいいから一つ作って、よりよく暮らせるようにする必要があった50年前の父の世代とは異なり、今ではものを作っても〈きちんとしたもの〉を売ってこそ価値を認められる時代だと判断して始めた事業です」。

「きちんと作る過程」を見て体験すること自体がビジネスモデルとなって、結果的には毎日乳業のブランド価値も引き上げることができるというのが金会長の考えだ。

まだ上下農園プロジェクトは進行中だ。 「農夫の憩の場」をテーマに作られたテーマパーク内のホテルは来年初めにオープンする。今年、上下農園は年間7万人が訪問して、売上げは50億ウォンを上げると期待されている。 5年後の2020年には年間30万人で、売上げは300億ウォンを目標に立てた。

金庭完(キム・ジョンワン)会長の上下農園は、全羅北道の高敞のみにとどまらない。金会長は工房で製造された手作りのハムやアイスクリームなどを、毎日乳業が運営している外食ブランド「ザキッチン・サルヴァトーレ」などで販売する計画も持っている。上下農園を中・長期的に有機・手作り食料品を網羅する、単独のブランドに育てるというのが金会長が描くもう一つの絵だ。

まずは開始段階として、全国の消費者が上下農園の食料品を購入できるように「上下農園オンラインショップ」を先にオープンした。時間を経て上下農園の訪問者が多くなり大衆化すると、「上下農園ジェラート工房」などの農園内工房やレストラン店舗を、ソウルなど農園の外に出す考えもある。

このような試みを通じて、金庭完会長が得ようとするものは何だろうか。業界1位になりたいのではないかと尋ねると、金会長は首を振った。金会長は「1等になりたいという思いは一度もなかった」とし、「競争力のある会社になろうとだけだ」と語った。
  • 毎日経済_高敞=イ・セボム記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-04-27 23:49:23




      • facebook icon
      • twetter icon
      • RSSFeed icon
      • もっと! コリア