トップ > コラム > 人物 > 「ドンジュ」イ・ジュンイク監督「血が沸き上がった…だから20年準備した」

「ドンジュ」イ・ジュンイク監督「血が沸き上がった…だから20年準備した」


  • 「ドンジュ」イ・ジュンイク監督「血が沸き上がった…だから20年準備した」
李濬益(イ・ジュンイク)監督に再び会ったのは1年4ヶ月ぶりだ。昨年2月、映画『空と風と星の詩人(原題:ドンジュ』のインタビュー当時の彼は、「次の作品はアナーキスト朴烈(1902~1974)の話だ。『ドンジュ』とはまた違った感じになるだろう」と語った。誇張ではなかった。

本当にそうだった。映画『朴烈』(28日封切り)は、『ドンジュ』とは全く違った。また異なるレイアーの感動があって、複数のポイントが血を沸かした。

抵抗と闘争の方式そのものから異なった。詩人の尹東柱(ユン・ドンジュ)が孤独に詩を書くことで日本の暴圧に抵抗したとすれば、朴烈は冷徹な理性と気概で日本の支配層に対抗した。自分のようなアナーキストの金子文子(かねこふみこ、1903~1926)とともに、自分の足で日本の最高裁判所に入り、帝国主義の矛盾をひとつひとつ指摘した。

当時、彼の年齢は二十二才で金子は二十才。驚くべきことは、死刑判決をものともしない彼らの闘争が完全に実話だということだ。

今年は57才になるこの中堅監督は、果たしてどこまで進むのだろうか。 2015年の『王の運命(原題:思悼)』に続き、一回の失敗作も出さなかった。 『王の男』(2005)以来続いていた起伏も、いまや消えたようだ。

去る14日、ソウル市三清洞のカフェ。久しぶりにイ・ジュンイク監督と向かい合って座った。彼は言いたいことが多くあるようだった。


- 『ドンジュ』に続き『朴烈』です。なぜか連作の感じがするのですが。

△ なに、そんなことを意図したわけじゃない。声が裏返る、そんなことを言われると。ただ彼(インスピレーション)が来るたびにそれに忠実になるだけさ。

- 『アナーキスト』(2000)製作当時から朴烈に注目されていました。ほぼ20年になります。

△ 1995年からだった。抗日運動家の資料を検討している時だった。朴烈はほんとうに特別に近づいてきた。日本の帝国主義の本土・東京で、政府に対抗したじゃないか。最高裁判所という心臓部でね。そこで爆弾よりも強力な宣言をしている。劇中に朴烈の台詞をほぼそのまま使ったんだ。裁判記録にも残ってるし。

- とてもドラマチックで、これが果たして実話なのかと疑うほどです。

△ 映画よりも映画的? 90%以上、実話だよ。朴烈がピンクの官服を、金子がチマチョゴリを着て法廷に入ったことも、そこで朴烈が扇子を振ったことも実話だよ。劇中で法務大臣が3回変わる。それじゃ混乱するじゃないか。映画的に不利だね。それでも守らないと。日本でこの映画をめぐって捏造だと卑下する余地を与えたくないから。

- 考証作業はどのようにしましたか。

△ 山田昭次の素晴らしい評伝がある。それと金子文子の獄中手記などを、ボロボロになるまで見た。それ以外の資料は日本の内閣の記録をインターネット上でありったけ探しまくった。朝日新聞と産経新聞から、その当時のデータをすべて受け取ったしね。これらの新聞は映画がとても気になるだろうね。資料を出す条件として、後でDVDを送ってほしいと。とても協調的だった。

- 朴烈と金子の交感はお決まりのラブラインと次元が違うでしょう。

△ 典型的なプラトニックラブ。精神的な愛。かっこよくない?精神的な同志として同居誓約を結んだ二人の男女の、完全な精神を損なわずに伝えようとした。美化も貶下もなく。

- 朴烈の詩「私は犬畜生だ」はこの映画のすべてを圧縮していますね。

△ そうだ。 (彼は詩の前文を読む)「空を見て吠え/月を見て吠え/しがない私は/犬畜生だ/気位い高い両班の股から/熱いものがあふれ出て/私が沐浴するとき/私もその足に熱いひと筋を噴き出す/私は犬畜生だ」。気位い高い両班は日本帝国主義に対するメタファーだろう。彼の足にじぶんも小便をかけるということだろう。お前たちが暴圧するなら私もそっくり返してやろう…朴烈は実際に自分が書いた詩のとおりに生きてきた。

- 彼が世界を眺める視点が魅力的です。日本だといって無条件に悪に看做していない。民衆を抑え込む力が敵であるはずなのに、この考えは国家や民族単位を超えますね。ある面ではイエスのようでもあります。ボロを着た民衆の愛、死の道に自発的に飛び込むことや、みすぼらしい用品類に長くのばした髪の毛まで。

△ そうだ、二人は自分が置かれている痛みを自身の中だけで解決しようとしなかった。連帯意識を持ち、民衆を代表しようとしていた。私は彼らが死刑を勝ち取ったのだろうと見る。(彼らは後に無期懲役に減刑される。世論を考慮した日本政府の妙策だった。金子は後に自死し、朴烈は22年間投獄される)死刑判決が下されて、朴烈が「ご苦労だった」と裁判官に言うじゃない。目的を達成しというわけ。若者たちがこの映画を見て、血が沸くことを望む。
  • 毎日経済 キム・シギュン記者/写真=イ・チュンウ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2017-06-15 18:06:30




      • facebook icon
      • twetter icon
      • RSSFeed icon
      • もっと! コリア