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全国民の「コロナ」抗体検査を推進する理由は?


  • 全国民の「コロナ」抗体検査を推進する理由は?
  • 抗体生成の原理


全世界的にコロナ19の「抗体検査」必要性を主張する声が高まっている。コロナ19ワクチンと治療薬の開発がいつ成功するか不確実な状況で、抗体検査を通じて国民の抗体の形成比率を知ることができれば防疫政策を変更し、経済活動を再開する根拠とすることができるからだ。すでにドイツやイタリア、イギリスが全国単位の抗体検査の実施を発表したし、米国ニューヨーク州の一部で抗体検査をしてみたところ、住民13%にすでに抗体があることが分かったと明らかにした。韓国政府も最近、コロナ19の再感染可能性と今年の秋の2次流行に備えるために、抗体検査を積極的に検討している。

抗体検査を行えば、症状がなくて診断テストも受けていない「隠れた」感染者を見つけ、国内にコロナ19がどのよう拡散していることも把握することができる。抗体(antibody)は病気を患ってから生じる「免疫の証拠」で、抗体検査を行えば過去の感染の有無を確認することができる。抗体検査は体の中のウイルスの存在を把握しようとするのではなく、免疫システムをチェックするものだ。これにより、集団免疫の形成程度も計ることができる。集団免疫は一集団のメンバーが一定の割合以上が感染すると、集団全体が感染症に耐性を持つようになるものだ。感染症の専門家らは、コロナ19の場合はコミュニティ60%以上が免疫力を備えれば集団免疫が形成されたと看做している。

ジョシュア・ウェイツ米ジョージア工科大学教授の研究グループは、コロナ19の感染後に回復した患者が集団内で人と相互作用(接触)するようにすれば、集団免疫を強化するところに役立つという研究結果を国際学術誌『ネイチャーメディシン』に発表した。米国内の患者の事例をもとに、疫学モデルをシミュレートした結果だ。ウェイツ教授は「すべての人を対象にロックダウン(移動制限)のような高強度の社会的距離維持を行うと、社会的・経済的打撃が大きすぎる」とし、「抗体検査を通じてコロナ19ウイルス(SARS-CoV-2)の抗体を持っている人を選別し、これらを中心に日常生活を回復するようにする必要がある」と語った。ランダムにすべての人の間の接触を控えるさせることよりも、抗体の有無に応じて選択的に対応することがより効率的だという説明だ。

研究者らはコロナ19の伝染性が強い時と弱い時を想定した2つのシナリオを土台に、1000万人の人口集団でコロナ19の感染履歴があるが陰性判定を受けた人(抗体を保有している人)が日常生活を行ったときのコロナ19の伝播に与える影響を分析した。この時、抗体のある人はコロナ19感染者(陽性)とも安全に相互作用できると仮定した。

分析の結果によると、抗体の有無を知ることができない人の相互作用(他人との接触)を、コロナ19の抗体を保有している人の相互作用に置き換えると、予想死亡者数は大幅に減ることが分かった。

抗体は文字通り、外部からの病原体が体内に侵入したときに押し戻す免疫力をいう。健康な人はコロナ19に感染しても、軽く病んでやり過ごすこともできる。免疫力が良ければ抗体を生成し、ウイルスを退治することができるからだ。しかし加齢にともなって免疫関連のT細胞と白血球やB細胞(抗体を生成する白血球一種)などの機能が落ち、感染症への露出に弱くなって容易に重症化する。

ある種の病原体(抗原/antigen)が私たちの体に入ると、人体に害を与えないように細胞に抗体が生成されるが、この抗体は「ガンマグロブリン」と呼ばれる特殊なタンパク質で構成されている。これは「免疫グロブリン(immunoglobulin)」とも呼ばれる。免疫グロブリンと抗体は同じだということだ。

抗体は病原体の侵入を受けると特定の抗原に対して免疫性と過敏性を見せ、凝集・沈降または抗原毒素の中和作用などの特異反応が起きる。抗体と抗原が体の中で会って起こる特異な反応を「抗原・抗体反応(antigen-antibody reaction)」という。ワクチンはまさに抗原・抗体反応を利用して作ったもので、人体に害を及ぼさない偽の病原菌を注入し、私たちの体で実質的な病原体に対抗する抗体を生成させる治療剤だ。凝集は抗原に抗体がくっついて抗原同士が束になることを、沈降は抗原・抗体の一つになった塊がその重さのために沈むことをいう。凝集と沈降は貪食細胞(マクロファージ)がウイルスを保持して食べやすいようにする。中和作用は抗体がウイルスと戦って無力化させ、感染を妨害するものだ。

であるならば、抗体はどのように生成されるのだろうか。ウイルス(抗原)の浸透→免疫システムの作動→抗原とB細胞結合→抗体の生成という手順を経ることになる。ウイルスやウイルスに由来したタンパク質が体内に入ると、私たちの体はこれを抗原として認識して1次防御システム(先天性免疫)と2次防御システム(後天または獲得免疫)を稼働する。 1~2次の防衛は免疫システムによって作動し、白血球と免疫細胞が重要な役割を果たす。

このように抗体はウイルスを無力化する最高の武器だが、抗体が生じてもコロナ19ウイルスが死なない事例が続出している。感染後に完治して抗体が形成された後でも、ウイルスが検出された「再陽性」事例が6日の時点で356件に達した。再陽性は2003年の「SARS(サーズ/重症急性呼吸器症候群)」や2015年の「MERS(マーズ/中東呼吸器症候群)」の流行時にも経験していない。

感染症ごとに抗体が維持される期間は異なっている。麻疹は一度感染したりワクチンを打てば生涯抗体が維持されるが、季節性インフルエンザの抗体は約6ヶ月で消える。キム・ウジュ高麗大学九老病院感染内科教授は、「コロナ19で完治して形成される抗体に対する情報はまだ白紙の状態」だとし、「完治者のうちで再陽性が発生する原因も、抗体をめぐる秘密を解いてこそ明らかになるだろう」と説明した。
  • 毎日経済_イ・ビョンムン専任記者/ソン・ギョンウン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2020-05-08 17:24:05




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