ソウル大チャン・ビョンタク教授…韓国AIの第一人者



  • ソウル大AI研究院の初代院長を務めているチャン・ビョンタク コンピューター工学科教授が未来の人工知能ロボットについて説明している。 [イ・スンファン記者]


成人の膝くらいの高さの人に似ているロボットが、キッズルームで見るような色とりどりもマットの上を動き回る。あちこちに置かれた人形やおもちゃにぶつかるかと思えば、小さな車輪で前後に方向を変える。指を一つずつ握ったりひろげたりするように、首を左右に回したりもする。まるで二~三歳くらいの子供の動きを見ているようだ。また別の部屋には複雑なコードを組む大学院生らの周辺に、人間サイズのヒューマノイドロボットがいる。ホームロボットを教育するために家庭のようにベッドや家具も配置されており、他の研究室とは全く異なる雰囲気だ。

ソウル大学AI研究院長を務めているチャン・ビョンタク コンピュータ工学部教授(57)の研究所は、さまざまなロボットでぎっしりだ。チャン院長は人工知能(AI)学界の異端児と呼ばれている。仮想の碁盤の座標の中に存在する「アルファGo」を超えて、人間と同じような体を持つAIを作ることがチャン院長の目標だ。まるで子供を育てるように、AIに哲学心理学、教育学の理論などを組み合わせる融合研究にも熱心だ。最近、ソウル大AI研究院で会ったチャン院長は、「幼児期の子供のように完全な自律学習を行う、次世代AIが30年以内に登場するだろう」と語った。

- マシンラーニングに魅入られたきっかけは?

△ コンピュータ工学の学部2年生だった当時、1970年代に出版されたマシンラーニング(Machine Learning)関連の本にぐうぜん接した。本で機械がパズルを解く話を読んで、マシンラーニングに興味がわいた。機械に知識を注入するのではなく、多少遅いけれど自ら学び、改善するAIに魅了された。韓国でマシンラーニング技術が注目されていないときから30年間、研究活動をしながらAI学界の胎動期と低迷期、産業化の時期をこの身で経験した。機械が自ら学習にするという点で、マシンラーニング技術は革命だと見ることができる。

- 今のAIはどの段階なのだろう?

△ AIという言葉が使用されてから65年が過ぎたが、このように注目される技術になったのは比較的最近のことだ。第1世代の古典的なAIがあったが、AIに対する投資と研究人材を求めにくい氷河期が長かった。今ではAIではないものまでAIと呼ぶほどの人気だ。今のAIには人間のような体がないという限界がある。「アルファGo」は囲碁はうまいが、両目で碁盤を見ることもできず、手で碁石を置くこともできない。現実の世界ではなく、仮想の座標世界でのみ存在するからだ。だから依然として人に依存しており、データを受けて学習する。

- AIも体が必要なのだろうか?

△ 私たちの体は実世界のデータ収集装置だ。触ってみてこそ熱いことが判るように、試行錯誤を経験して知識を積む。私たちの脳も迅速かつ柔軟に、実世界を理解するための学習装置だ。 AIがチェスや囲碁の能力は優れているが、1歳レベルの運動能力や知覚を備えることはとても難しい。 AIもロボットを活用して仮想から現実に乗り出して、人間と同じ方式で学ぶように作らなければならない。このような学習は、24ヶ月未満の乳幼児が手に取れるすべてを触ってみて口に入れてながら学ぶ方法と似ている。

- 幼い子供のようなAIを作るのだろうか?

△ そのとおり。心理学者ピアジェの認知発達理論と脳科学理論などに着目した「ベビーマインド」プロジェクトを進めている。自律学習をする子供の姿に着眼した。心理学、言語学、機械工学、脳認知工学などのさまざまな分野の専門家とコラボレーションしている。乳幼児は目や耳、手と足などで感覚運動を行い、周りのものを理解する。子供のように知能を具体化させるためには、AIも体をもつことがとても重要だ。人間のレベルに到達したAIは、人がデータを入れて命令しなくても24時間完全自主学習をすることができるだろう。

- 国際学会に関連ワークショップを開くと聞いたが?

△ 来る11日、世界最大の人工知能学会であるニューリップス(Neural Information Processing Systems)でワークショップを開く予定だ。韓国人がニューリップスのワークショップを主催するのは初めてだ。テーマは「ベビーマインド」だ。今のマシンラーニングは人に依存するが、子供のように自律的学習をするAIについて発表する計画だ。コンピュータ工学だけでなく、さまざまな分野の専門家がワークショップで一緒になる。米国の脳科学者ゲイリー・マーカス氏やワークショップの共同議長を務めるカリフォルニア大学バークレー校のセレステ・キッド心理学教授、ベルリン工科大学のオリバー・ブロック教授などさまざまな分野の専門家が講演者として参加する。

- 子供に似たAIが必要な理由は?

△ 人を理解する気の利いたAI、柔軟な知能を持つAIが必要だからだ。 AIも人とのコミュニケーションの経験がなければならない。高齢者のケアを例にあげてみよう。今のロボットは単に高齢者に必要な薬をわたすことはできる。しかし身体の不自由な高齢者に、薬を直接飲ませることまでは不可能だ。次世代AIは人の意図を把握して薬袋の封を切って与え、薬を飲むときには必要な水を持ってくることができるだろう。

- 実生活でどのように活用されるだろうか?

△ 一般家庭で使用されるホームロボットが普及するだろう。今の研究室を家庭のように飾っておき、人に似ているロボット「ペッパー」があちこちを歩き回るようにしてある。ホームロボットはAIスピーカーのように人とコミュニケーションし、直接物を動かすこともある。応用サービスとして障害児の指導方法や保育体験および遊戯治療を行い、仮想学習環境と教材を作成することもできる。仮想環境で赤ちゃんのアバター実験を通じて、発達障害の子供のための治療・学習環境を用意することもできる。


  • チャン・ビョンタクAI研究院長(中央)と大学院生がソフトバンクロボティクスが開発したヒューマノイドロボット「NAO」を持って話を交わしている。


- 実際のAIロボットが普及するまでにかかる時間は?

△ 今の段階ではぶつからないで動く方法、落としたものを認識して再に取る機能などを改善している。手のひらにハプティックセンサー(Haptic Sensors)をつけて物を検出したり、複数のカメラをつけて物体がないかどうかを検出する方法だ。 2017年に日本の名古屋で開かれた国際ロボカップ大会で、私たちの研究所が開発したAIプログラムを搭載したロボットが優勝した。今後は30年以内にAIロボットを現実化させようと努力している。 30年よりももっと早い時期に、現実に近づくことができる。

- 人間に敵対的なロボットが出てくる可能性はあるだろうか?

△ 実際にハリウッド映画のような人間の制御から外れたAIが登場する危険性もある。人類を滅亡させようとする映画の中の悪いAIも、雲をつかむような話ではない。 AIの倫理ジレンマでもある。親が子供を制御するように、人がAIを制御すると自ら賢くなることは難しいし、自律や動機を与えると、予想不可能な行動をとることもありうる。一方、人が制御して知能を入れること自体が知能を制限するものであり、新しい環境への適応も遅くなるしかない。単に技術的な部分をこえて、哲学的・存在論的悩みでもある。

- AIと人文科学が融合することがある?

△ AIはさまざまな分野との融合が可能だ。例えば子供の発達理論や教育理論のツールとして活用しながら、人には実験できなかった多様な理論を実際に実現することができる。同様の方法で、天文学・物理学の研究のツールになることもある。さまざまな分野の専門家を融合してクラスタリングする「X+AI」がこのような概念だ。ただし韓国は協力研究が外国に比べてよくない。ソウル大AI研究では専門家らが一緒に融合研究を活性化させようと努力している。

- AI研究院(AIIS)はどんなところなのだろうか?

△ AI研究院は「仮想を現実に」持ち込む研究をする。昨年12月に設立し、最近に1周年を迎えた。複数の学問分野に散らばっているAIの専門家を一堂に集め、法学・文学などを包括した学際的な協力研究を行っている。現在、研究者の規模だけで2000人にのぼる。代表的には「集談会」を介して、複数の単科大学の教授間ネットワークを設けて教育費などを支援している。メジャー学会にAI関連論文をたくさん提出して影響力もあるが、人材が不足している点が大きい。優秀な人材をソウル大の中で育成し、その人材が外部で他の専門家を養成しなければならない。

- 最近注力するプロジェクトは?

△ 代表的なのが前述の「ベビーマインド」だ。研究所の子供の部屋のようにカラフルなブロックやおもちゃで飾っておいて、ヒューマノイドロボットが物をつまんで移動させるように学習させている。もう一つはビデオチューリングテスト(VTT)で、ドラマを見てプロットと人の表情や感情などを認識するようにし、人と一緒に泣いたり笑うことができるAIを作るものだ。人気ドラマ『また!?オ ・ヘヨン』『チャッカン ナムジャ』『ミスコリア』を見て、人間レベルのビデオ理解知能技術を開発している。表情データ事業は、科学技術情報通信部と韓国情報化振興院が後援を受けた。

- 韓国のAI研究支援はよく行われているのだろうか?

△ 第4次産業革命に合わせて急いでかなりの金を投資しているが、価値が大きくないことに消費されることもある。単純なデータを集めるラベリング作業のようなものだ。もちろんデータを集めることはAI研究の基礎として必要だが、それをうまく活用することがもっと重要な課題だ。 AI人材の需要はますます増えるが、大学の関連学部の定員が制限されていることも問題だ。現在のコンピュータ工学科の定員70人を700人に大幅に増やしても足りない。大学院には人工知能協同過程と、データサイエンス大学院があるけれど学部人員も切実だ。

△ He is...

1988年ソウル大学コンピュータ工学の修士卒業後、1992年に独ボン大学でコンピュータ工学の博士課程を終えた。 1997年から現在までソウル大教授として在職中で、2010年に韓国情報科学会、人工知能・ソサエティー会長、2014年に韓国認知科学産業協会会長などを歴任した。マシンラーニングの分野の国内最高の専門家。
  • 毎日経済_イ・グミ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2020-12-05 09:19:44