『開国』KBS（1983年） - ソン・ジェホ
『朝鮮王朝500年 楸洞宮媽媽』 - MBC（1983） - キム・ギイル
『龍の涙』KBS（1996） - チョン・スンヒョン
『辛ドン 高麗中興の功臣』MBC（2005） - キム・ハン
『大風水』SBS（2012） - パク・ジュンヒョク
『鄭道伝』KBS（2014） - イム・ホ
『六龍が飛ぶ』（SBS2015） - キム・ウィソン

現在は休戦線により塞がれていますが、南北関係が良好だったとき開城観光に行く人たちが必ず訪れる遺跡があります。韓国人にとって忠臣の代名詞とされる鄭夢周（チョン・モンジュ、1337~1392）の魂が込められた善竹橋（ソンジュクギョ）です。

ユネスコ世界遺産にも登録されている善竹橋。元の名前は善地橋（ソンジギョ）でしたが、鄭夢周が李芳遠（イ・バンウォン）が送ってきた刺客の趙英珪（チョ・ヨンギュ）一味に殺された後、足の横から竹が生えてきて名前が変わりました。鄭夢周の故郷である慶尚北道永川市に仮設の善竹橋があります。

歴史を少しでも知っている韓国人なら圃隠（ポウン）鄭夢周が李芳遠（朝鮮3代太宗）と『何如歌』と『丹心歌』を交わして白昼に善竹橋で鉄槌で殴られて息を引き取ったことを知っていることでしょう。

『何如歌（ハヨガ）』
こうでもいいしああでもいい
萬壽山（マンスサン）の葛のつるが絡まっていようがなんだというのか
我らもこのようにからまり百年まで享受しよう

『丹心歌（タンシムガ）』
この身が死んで、百度死を繰り返しても
白骨がちり（塵土）になり魂があってもなくても
あたなに向けた思いがなくなることがあろうか

朝鮮を開局した李氏一家の求めを一言で断わりました。だからといって易姓革命をくわだてる側としては彼を生かしておくことはできませんでした。朝鮮が開国し登用した人材で鄭夢周の弟子や文人ではない人を探すのは大変でしたので、それほど彼の影響力が大きかったものと推測できます。

鄭夢周は俗に言うローマの哲学者で政治家でもあるキケロ（Marcus T. Cicero）に匹敵しますね。キケロはカエサルと厚い親交関係を築いたように鄭夢周と李成桂の関係も高麗末の改革を主導した同志でした。

彼は恵まれた学者でした。彼が性理学を学ぶ当時、高麗には関連書籍は数冊しかありませんでした。鄭夢周は内容を読んでは注釈をつけました。周りの人々は、彼の解釈が正しいのか疑問でしたが、後に性理学書籍が大量に搬入されて内容がほぼ一致していることを知り、皆感心しました。そのため鄭夢周は東方理学の鼻祖とされています。

恭愍王初期の科挙の試験に状元（一等の成績）で合格して官職になり、スピード昇進を重ねましたが、彼は決して弱い学者の端くれではありませんでした。1380年、李成桂が海賊と疎通するときには部長として側を守り、ほぼ単身で対馬に渡り海賊たちに捕えられた高麗の良民数百人を救出し、勇猛を発揮することもありました。

大陸を新たに支配した明国との関係改善にも先頭に立ち、洪武帝に抑留された高麗の使者を釈放し、高麗の立場を理解させ、無理な租貢要求を撤回させるという目的も達成ました。洪武帝も鄭夢周の人となりを見て、彼を大事にしました。初めて明に使節として派遣されて帰国する途中に難破して十数日を漂流しましたが、この知らせを聞いた明の皇帝が人を送り、海の上を調査させ、命が助かったと伝えられています。海賊に捕らえられた高麗人を連れて戻るために私財をつぎ込んだりもしました。

官吏としても優れた能力を発揮しました。明の大明律を参考にして法律を再整備し、貧民を救済するために義倉を設立しました。漕運施設を再建して国家財政を回復させ決まりがなく雑に処理されていた会計出入も改革して担当の官吏を置いて厳重に管理し不正を防ぎました。人選するときも厳重に見極め、能力のない官吏が重用を得ることがないようになりました。

高麗末と朝鮮初期を生きたパク・シンというソンビ（士）が「民が戦禍を受けずに楽に食べて寝ることができるのは、すべて先生の功績」と言ったほど鄭夢周は優れた能力と人柄で民衆から信頼されていました。

高麗社会で鄭夢周の影響力は、単純な宰相のレベルではありません。朝鮮開国に加担した趙浚は弟を参加させようと説得をして、「一言の言葉と一つのことでも達可（鄭夢周の字）と異なるのであれば、国が滅びるのを促すこと」という言葉に反論すらできなかったと言われています。

一時は、李成桂、鄭道伝とともに高麗社会を改革しようとしていました。鄭道伝を李成桂に紹介してくれた人も鄭夢周です。李成桂が威化島で回軍し大将軍チェ・ヨンを殺し、禑王と昌王を廃位して恭讓王を擁立したときも李成桂と意を共にしました。李成桂が追求する易姓革命に反発しながら命を終えたわけです。

鄭夢周の殺害のニュースが伝えられると、開京市中の商人たちは、数日間お店をお休みし、彼の死を哀悼し、山中の僧が忠臣の遺体を放置することはできないと命がけで夜に集まり、移動をさせ葬事を行ったと伝えられています。このニュースが日本に伝わると、彼に会ったことのある日本人が別に祭祀を行ったそうです。

朝鮮の開国に反対し殺害されたましたが、彼の忠誠は、朝鮮王朝でも高く評価されていました。事実上、彼を誅殺した太宗は自分の即位元年に鄭夢周を領議政に追贈し、益陽府院君として封じました。京畿道龍仁の彼の墓もほとんど王陵に匹敵するレベルです。

子孫たちも朝鮮王朝から迫害を受けていません。幼い甥を退位させ、王位に上がった世祖の時、死六臣事件が起きると鄭夢周の孫の鄭保は彼らは罪人ではないと肩を持ち両手両脚を切断される車裂刑に処されました。しかし、後になって、彼が鄭夢周の孫であることを知った世祖が慌てて刑を停止し、迎日に帰郷させるだけに止まりました。燕山君の時も師匠のチョ・ジャソがさげすんだ罪で処刑されることになりましたが、彼の妻が鄭夢周の曾孫であることを勘案して連座されることを避けることができました。