A. | そうなのです。筆者もニュースを見ました。韓国経営者総協会(以下、「経総」)がそんなデータを出しました。 資料に関しては是非が問われていますが、まず経総が出した資料から見ることにしましょう。正しいと感じようが、抜け穴だらけの資料だろうが、まず見るのが筋というものでしょう。 経総が根拠とした資料は、2014年度の雇用労働部の雇用形態別労働実態調査資料と、同じ年の日本の厚生労働省の賃金構造基本統計調査資料です。両国の政府機関が同じ基準で統計を作成したのかが、まず問題になるでしょう。このため、経総は日韓の賃金を比較する文章を「厳密な比較は難しいが」というヒントを付けて書き始めています。 これまで経総の賃金分析資料を巡って攻防戦が繰り広げられてきたからです。日韓の大卒初任給の賃金を比較した資料は、2008年から出ていました。今回発表された資料が、特別新しいものではないという意味です。 韓国の300人以上の大企業の正規職の大卒初任給の賃金総額は2014年度に3,976万ウォンと、ドルに換算すると3万7,756ドル(為替レート1ドル= 1053.1ウォン)。同年、日本の1000人以上の企業の常用職の大卒初任給は287万1千円(2万7105ドル。為替レート1ドル= 105.9円) 韓国の場合、超過勤務手当や実績に応じた特別なボーナスを除くすべての賃金を合計してあり、日本は給与と賞与(特別給与)を合わせて計算したそうです。 経総の資料を見ると、韓国の会社員は給料を上げてほしいという意見を出すことが難しい状態です。日本では「韓国より少ないのか」と腹を立てるかもしれません。実際に経総が、このような資料を出したのも、このような理由からです。日本の会社員を冷やかしているのではなく、韓国企業の給与を少なくしたり、凍結するためだということです。 経総は今回の発表で、2014年の賃金に加え、5年間の年平均賃金増加率を乗じれば、昨年の大企業の新入社員の賃金総額は4074万6000ウォンだという資料も出しました。これはあまりにも多いので、今年の賃金は凍結して、新入社員の初任給が3600万ウォンを超えるのであれば、少し減らせというアドバイスも忘れません。 日本企業の会社員が怒る前に、韓国では中小企業の労働者、非正規職社員が不満を噴き出しています。日本とは異なり、韓国は大企業、中小企業、零細企業などの企業規模や、正規職なのか否かに応じて、賃金格差が大きいのは事実です。経総が用意した2個の表は、この点を克明に見せてくれます。
経総は、さらには政府が出す処方は簡単です。大企業の従業員の給料があまりにも多くて階層間のズレが生じており、雇用が増えないというのです。大企業の賃金を下げれば、雇用が増えるという主張も続いて出てきます。 賃金を比較するには、為替レートはもちろん物価、社会の福祉水準など、参考にすべき事項が非常に多くなります。一日の賃金の比較で重要なのは、昇進に伴う賃金上昇です。代理に昇進すると韓国では新入社員の時より32.4%程度上がりますが、日本では61.3%引き上がります。代理に昇進すると日韓の賃金は一気に逆転してしまうのです。次長や部長に昇進するほど賃金格差は増えます。 ここで注目すべき部分は、新入社員の年齢です。経済人総連の資料をそのまま引用すれば、韓国は34歳以下、日本は20~24歳です。24歳で入社して、うまく昇進すれば、34歳くらいには課長、どんなに遅くとも代理ほどにはなっているでしょう。 日本も韓国も、結婚したり職場から引退する時期が似ているのであれば、人生の重要なポイントに貯めたお金、そのときに受け取る賃金にどのような違いがあるのかは、あえて説明する必要もないでしょう。 韓国大企業の大卒新入社員が受け取る給料が日本より多って? まあ、それが事実である可能性もあります。韓国の大企業に就職する年齢の青年たちが、日本では代理に昇進するのですから、So What? |