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実験用マウスの短くない生涯…韓国だけで毎年150万匹が犠牲に

短命・多産、人間と遺伝子80%同一 

  • 実験用マウスの短くない生涯…韓国だけで毎年150万匹が犠牲に
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こんにちは。僕は実験用のマウスだよ。名前はICRって言うんだ。韓国科学技術研究院(KIST)の統合実験動物室で暮らしている。生後6週目のオスだよ。6週目だからといって、幼くはないよ。ラットの6週間は人間で言えば血気盛んな10代に当たるんだから。交尾だってできる歳なんだよ。(笑)

僕は先月の29日に「精管切除」をやられた。これからは子どもを作ることができない。本当に悲しい鼠生だね。自分の種をたくさん広めたいのは、すべての動物の本能だけど、これは余りにもひどい。これもすべて君たち人間のための実験マウスたちの犠牲だってことをちょっとは知ってほしいな。

僕はもうすぐ無菌室でメスのラットと一緒になるよ。精管切除をしたから子どもは作れないけど、メスは僕と一緒に過ごしながら、妊娠したと思ってホルモンを分泌すんだって。僕の役目はそこまでさ。僕と交尾したメスのマウスは受精卵移植手術を受けることになる。移植された受精卵は子宮に着床されて「無菌マウス(SPF・Specific Patogen Free)」として生まれている。着床させた受精卵は無菌マウスの中でウイルスや細菌に感染したマウスが作った受精卵だ。細菌に感染していても受精卵はきれいだから。でも、受精卵がきれいでも、ここから生まれた子ネズミはすぐに感染することもある。だから、他のメスの無菌マウスに受精卵を着床させて完全な無菌マウスを産ませるのさ。結局のところ、僕は無菌マウスを作るために存在すんだ。

マウスの遺伝子は、人間と80~90%が同じなんだ。寿命も2年程度と短く子どももたくさん産む。人に存在する臓器、組織なども持っている。新薬の開発や病気を理解するために、僕たちのような実験用マウスが必要な理由さ。オランウータンのように人間とほぼ同じ動物で実験をすればいいんだけど、希少動物であるだけでなく、高くて使うことが難しい。

一方、僕たちの犠牲はそう負担にならないみたい。KISTでだけ一年に1トン程のマウスが実験に使用された後、命を落とすんだ。マウスの重量が20グラム程度だから大まかに計算しても5万匹が犠牲になるんだ。食品医薬品安全処の統計によると、2013年の実験動物の生産量は、なんと388万8204匹、輸入実験動物は19万2207匹にもなる。生産された実験動物のうちの326万9059匹、輸入量のうち15万1735匹がすべてマウスだ。実験動物の約85%がすべてのマウスだと考えてもいい。

実験用マウスのうち、特に重要となるマウスは「遺伝子組換えマウス」と「形質転換マウス」だ。遺伝子組み換えマウスは、特定の遺伝子を切ったり、なくしたマウスだよ。インスリン分泌遺伝子を取り除いて糖尿病にかかるようにしたマウスが代表的だね。形質転換マウスは人間が持っている特定の遺伝子を過度に発現させたものを指す。老人性疾患である「認知症」の場合、脳にアミロイド(amyloid)と呼ばれるタンパク質が蓄積すると発生するんだけど、アミロイドをマウスに強制的に注入するの。高齢者にならなければ現れない認知症の症状を生後数か月で発生するようにすることができる。価格は1匹当たり数万ウォンから多くは数十万ウォンになることもある。こんなマウスが、必要な病気のほかに別の病気にかかっているとしたら実験結果が台無しになるだろう。だから無菌マウスを作るんだ。正確で完全な実験のために。(人間は本当にひどい!)

今まで僕たちは様々な場所で人間のために犠牲になってきた。ほぼすべての新薬が僕たちのおかげで発売されたと見てもいい。認知症、関節炎、糖尿病、肥満新薬などは僕たちがいなければ出てこなかっただろう。人間が宇宙に宇宙船を打ち上げる時にも常に僕たちを先に送る。長期間の宇宙旅行を経たときに細胞がどのような変化するか調べるためのものだ。

僕たちの犠牲がどれだけ崇高なのか分かっただろうか。 KISTだけでも、これまでの10年間に実験マウスを活用して、200本以上の論文を書いた。だから実験動物を飼っている研究所のほとんどは僕たちの犠牲に敬意を表して、魂を慰めるための「慰魂碑」を立てている。

実験用マウスの飼育がこんなに重要なのに、韓国では投資がとても不足している。僕たちを上手に育てることができる教育システムも不足しているし、最近、KISTで20億ウォンをかけて最先端の無菌室を作ったんだけど、まだ国内にはこんな施設がたくさん不足してるんだって。僕たちをよく管理して守ってこそ良い実験結果が出てきて、君たち人間に大きな助けになるっていうのにね。今、僕は無菌マウスのメスと一緒になりに行くよ。近いうちに、様々な実験に活用される無菌マウスが生まれるだろう。その犠牲で人間の寿命が長くなったりもするだろう。すべて僕たちのおかげであることを知れってことさ。じゃあね。

※ 助けてくれた方:キム・ドンジンKIST脳科学研究所長職務代行、ウ・ジワンKIST神経科学研究団専門員、チョ・ヤクトルKIST神経科学研究団研究員
  • 毎日経済 ウォン・ホソプ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-02-03 04:01:03




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