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[世智園] 怪談


  • [世智園] 怪談
時代や社会を問わず、怪談は存在した。ほとんどは不安と恐怖を伴う。朝鮮時代には正しくない、怪しい、飛び回っている言葉だとして、訛言、妖言、浮言と呼んだ。その不穏性が王権の脅威になると考え、妖言の流布者に対する処罰は、王の直属機関である義禁府が担当した。しかし、「○○が○○と言っていた」という噂が事実だと判明が出た場合、怪談は瞬く間に真実に急変することもある。怪談に対する政府の対応が慎重かつ洗練されていなければならない理由だ。

朝鮮後期の実学者チョン・ヤギョン(丁若鏞 / 1762~1836)は、『牧民心書』で「浮説は根拠なしに出回ったりもするし、あるいは変乱の兆しがあって生じたりもするため、牧民官がこれに対応するときには、静かに鎮圧したり、黙々と調べなければならない」とした。単純なデマは静かに鎮まるようにし、何かの兆候があって生じているものであれば、その根を探して調査すべきだとの指摘だ。

韓国を危機に追い込んでいる中東呼吸器症候群(MERS / マーズ)が発症した後、韓国政府が最も早く取った措置は、「怪談の取り締まり」だった。SNSに乗って広がる噂が、まるでマーズ自体よりも危険であるかのように流布者を処罰すると脅かした。しかし、発症から18日後に政府が公開した病院リストは、SNSの欠片の情報を集めて完成させた「マーズ病院地図」と相当部分が一致した。大峙洞に赤信号が灯ったという噂も、学校休業情報もファクトと大きな差はなかった。

怪談が社会に混乱をもたらすことは事実だ。政府が積極的に怪談を防ぐことに乗り出したのも、狂牛病怪談、天安艦怪談などで頭を悩ませた経験からかも知れない。悪意を持って怪談をまき散らす事例もあるが、通常、怪談の生産は恐怖の発現であり、正確な情報に対する「渇き」から始まる。マーズ怪談が横行しているのは、見たり聞いたりしたことのない珍しい病気に対する恐怖を共有して、取得した情報を知人に、より早く伝えたいという欲望が結合したせいだ。

怪談が生息する最上の条件は、情報共有の不透明性、コミュニケーション不足だが、今回はまさにそうだった。しかし、怪談は科学的知識と明確な情報の前では、尻尾を下すしかない属性を持っている。情報公開を敬遠した政府に対する不信が私的な領域での情報生産をより旺盛にしたわけだ。

過去には口伝で噂が広まったが、今ではカカオトーク、フェイスブックなどを通じてLTE級に情報が流通する世界だ。それぞれのネットワークを稼動して得た特急情報は、SNSで集団知性の力を受ければ、もはや怪談と称しにくい「ファクト性の情報」となる。情報の過剰は、もしかしたら宿命だ。怪談の流布者を捕らえる旧時代的な方法では怪談を止めることはできない。統制よりは、公開が怪談を防ぐ唯一の方法だ。
  • 毎日経済_シム・ユンフイ論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-06-10 17:23:29




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