トップ > コラム > オピニオン > [コラム] マーズに埋もれた北朝鮮の核報告書

[コラム] マーズに埋もれた北朝鮮の核報告書

「北朝鮮の秘密核施設」報告書に対するソウルの表情 

顔にできた吹き出物が心配な娘が鏡を色々な角度から回して見ているが、そばで新聞を見ていた年老いた父親がかっと腹を立てる。

「このアカ野郎ども、この野郎どもは皆殺してしまわなければならない」

また、何かの記事が出たのだろうか。戦争中に親兄弟をすべて失った父親は北朝鮮ニュースが出ると、火のように怒る。西岸沖でで小さな騒動が起きていないなら、明らかに北朝鮮の核問題だろう。

父親の叫び声にゲームをしていた息子がドアを開けてのぞく。心配そうな表情ではない。ただうるさくてゲームの邪魔になるというイライラだけが顔に表れている。父親の激情は高まるが、すぐに静かになって家族は再び日常に戻る。

北核に対するソウルの風景は、およそこうだ。平和統一に路線を変更して、大統領が「統一大当たり」という流行語を作り出しても、ひたすら北朝鮮を呪う声に閉じ込められて、北朝鮮との対話の窓口も切断された韓国政府、ひたすら米国の動きと情報に頼ってワシントン発のニュースに一喜一憂するソウルの姿だ。

一時は、南北が「私たちの願いは統一」を歌ったが、人生に疲れた庶民たちは統一は眼中にもなく、北核は世界の超大国の米国に対抗する北朝鮮の世襲政権が繰り広げる無謀な抵抗だけだと感じるだけだ。

北朝鮮の核開発を阻止するために1994年、北朝鮮を攻撃しようとする米国を沈静させるために韓国政府が仰天した事態さえ、ほとんどの韓国人は気づかなかったか、たとえ知っていたとしても一時のハプニングと思ってしまうほどだから、核の前に震えなければならないソウル市民は、蚕室に建てられた高層ビルが崩れることが、より大きな心配事だ。

たまに関心を傾ける人もいるが、だからといってどうだというのか。彼の意見は北朝鮮の核問題を解決するにあたって、一考の価値もない。いや、韓国政府がすでに北朝鮮の核問題から疎外された形勢だから、アカ野郎にむかった高齢者の呪いを受け入れてくれるところはない。

北朝鮮が核爆弾を保有しているだろうか?
どれだけ持っているだろうか?
実戦で武器として使うことができるだろうか?

このような当然の質問すら韓半島(朝鮮半島)をめぐる列強の覇権争いと韓国の政治劇の道具に転落した状態だ。

保守陣営は、常に核で脅かす北朝鮮の恐喝にうんざりしている。生きていくのも大変なのに「核核ばかりを言っている」という露骨な皮肉も絶えず出ている。たまには、北朝鮮が核爆弾を保有したまま統一されれば、韓国が核保有国になると喜ぶ純朴な人もいる。

米国務省が最近議会に提出した公式報告書で、北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)以外に秘密の「核施設」を保有しているというニュースを出したのは、中東呼吸器症候群(MERS / マーズ)が猛威を振るった時だった。すでに米国ロスアラモス国立研究所のジーク・フリード・ヘッカー元研究所所長が北朝鮮を訪問したとき、ウラン濃縮施設が多く存在していることを確認し、今更新しいことでもないが、ワシントン発の北核ニュースで安保政局に力を入れるチャンスだったが、時があまりにも良くなかった。よりによって、MERSが猛威を振るっていたときだったからだ。

護国の月(6月6日に「顯忠日」があることから )である6月初め、ワシントン発の北核ニュースはMERSにより息を殺した。
  • O2CNI_Lim, Chul
  • 入力 2015-06-14 09:00:00




      • facebook icon
      • twetter icon
      • RSSFeed icon
      • もっと! コリア