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[コラム] AIと囲碁対決をするイ・セドル

人工知能は精神寡欲、明鏡止水の境地が分かるのか 

  • [コラム] AIと囲碁対決をするイ・セドル
ずいぶんと前、中学校に通っていた頃、囲碁に夢中になっていたことがあります。他の友人も同じだったため、互いに刺激になって、囲碁の本もかなり読みました。当時、買って集めた囲碁の本が今でも数冊残っていて、眠れない夜の睡眠薬の役割を果たしたりしています。

『定石辞典』という分厚い本は、数ページを呼んだだけでも眠りにつける効験を持っています。『定石辞書』は文字通り、定石を集めた本です。囲碁が始まって以来、行われた数多くの対局を検討した結果、攻撃と守備で最上の手順として認められたものが定石です。

定石どおりにさえ打てば、白黒の優劣が付きにくくなります。もちろん、定石通りに打つことも難しいことです。定石が数万通りにも及ぶため、天才棋士でも、すべての定石を覚えることは不可能に近いことです。さらに、まだ完成していない、つまりまだ白黒どちらにとって良いのか結論が出ていない定石もとても多くあります。

新しい定石も絶えず作られています。偉大な物理学者や数学者が発見した法則に学者の名前が付けられるように、棋士の名前をつけた定石も数多く存在します。

囲碁では定石がどうしてこんなに多いのでしょうか。理由は簡単です。場合の数が多いからです。碁盤は横19本、縦19本で、361個の点があり、一度の囲碁に登場する場合の数が宇宙の原子数ほどに多いと言われています。

単に場合の数だけを考えるなら、スーパーコンピュータが人間を凌駕する可能性が高いでしょう。そのためか、世界最強の人工知能コンピュータのアルファ碁(AlphaGo)が、現在最強の棋士の一人である、イ・セドル(李世乭)9段に挑戦状を差し出しました。

アルファ碁は、他の人工知能プログラムとの対決で勝率99.8%を記録しています。500回囲碁をうち、ただ一度だけ負けて499勝を収めているため、これは大変な成績です。この勢いでヨーロッパ囲碁チャンピオンである樊麾(ファン・フー)2段に5-0で勝つ気炎を吐いています。

人工知能がプロ棋士に勝つという開発者の宿願がかなったようなものです。IBMが開発したスーパーコンピュータのディープブルーが無敵の世界チェスチャンピオン、ガルリ・カスパロフを3勝2分け1敗で下したのが1997年だったので、20年間に渡り狙っきたことです。

チェスでは簡単に勝てていた人工知能が囲碁で苦戦をした理由は、場合の数がチェスより10の100乗多いからです。死んだ石が蘇ることはありませんが、石が死んだ場所に再び石をうつことができ、40~50個の石を殺す捨て石作戦もありますので、場合の数を計算するコンピュータも頭が痛いことでしょう。

来る3月、100万ドルの賞金をかけて開かれる予定の人工知能と世界囲碁チャンピオン間の決闘で誰が勝つでしょうか。まだ人工知能がトップクラスのプロ棋士を相手に勝つことは難しいというのが囲碁界の意見です。

アルファ碁を開発したグーグルのディープマインド(DeepMind)は、当然のことながら人工知能の勝利を壮語します。

人工知能と人間の囲碁対決ニュースを聞いて、囲碁十訣のうちの不得貪勝が思い浮かびます。勝利に執着すると負けてしまうという意味です。碁盤の前に座ったプロ棋士と人工知能のうち、誰がより勝つことに欲が出るでしょうか。

一局の囲碁を終わらせるまで、イ・セドルが明鏡止水のような静かな心を維持することができるでしょうか。人工知能が精神寡欲の世界を描くことができるでしょうか。本当に気になります。
  • O2CNI_Lim, Chul
  • 入力 2016-01-31 08:00:00




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