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[コラム] うつむいたお父さん


韓国が通貨危機に見舞われた時期、大衆から愛された小説がある。
『お父さん』

文体が優れているとか緻密な構成が目立つ作品ではないが、通貨危機という社会的な雰囲気とかみ合って書店に並べた瞬間、忙しく売れていった。

小説の主人公は学縁も地縁もなく昇進から落ちて、そのためか家族から尊敬されない公務員の家長だ。いつからか妻と別々に部屋を使い子供たちとは、ほとんど話もせずに過ごしている。韓国でよく見られる典型的な姿だ。

それから20年余りが過ぎた現在、父親の姿は変わったのだろうか?

新型コロナウイルスで家族そろって食卓に座る時間が増えた最近、父親の地位は高くなったのだろうか?

いや、相変わらずだ。
食卓に座っても交わす言葉は一方的だ。

一緒にいる時間が窮屈で、きつい言葉で相手を傷つけたりする。
コミュニケーションが取れない責任は、結局は家の大黒柱である父に向かう。

市場調査専門企業のエンブレンドモニターのアンケート調査の結果、回答者の約半分が「父親の存在感が薄い」と答えた。家庭を守ろうと外ではあらゆる侮辱に耐えながら暮らしているのに、いざ家庭でも歓迎されない状況に置かれているわけだ。

存在感が薄い理由は金稼ぎがぱっとせず、出世できなかったせいもなくはないだろうが、より根本的にはコミュニケーションに問題があるからだ。関心事も政治色も違う子ども、デジタル文化にはまった子どもに、陳腐なアナログ方式でコミュニケーションを取ろうとするため、うまくいくはずがない。

この調査でも、父親の存在感が府水理由について「経済力や物質的に役に立たないから」という理由よりは、「家族とあまりコミュニケーションが取れていない」(36%)、「話が通じない」(31%)という指摘が多かった。

父親は子供の生活習慣やお金を心配する一方、子供は父親の陳腐な社会意識に息苦しさを感じるという意味だろう。

うつむいた父親の姿は1人世帯の増加、離婚率と別居の増加で、家庭が崩壊する時期を象徴しているようにも見える。

しかし、未来が暗いわけではない。家族間の全面的な信頼まで崩れたわけではないからだ。同じ調査で親世代の72%が「子供たちは私を信じてくれる」と答え、子どもの大半(76%)が「両親は全面的に私を信じてくれる」と回答した。

子どもとのコミュニケーション方法を学び、経済的に豊かな環境で育てることができず、譲る財産もあまりないという申し訳ない気持ちさえ除けば、うつむいていた父親たちも顔を上げるのではないか、そんな期待もしてみる。
  • Lim, Chul
  • 入力 2020-05-16 00:00:00




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