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日韓国交正常化50周年、東レが開く経済協力3.0時代への道

セマングム東レが投げかけた韓日協力「第3の道」 

  • 日韓国交正常化50周年、東レが開く経済協力3.0時代への道
  • < パク・チョルヒ ソウル大教授 >

世界的素材企業の東レグループは、いまセマングムに化学製品工場を建設している。慶尚北道亀尾(クミ)の炭素繊維工場に続き、2つめの韓国工場だ。先月24日、工事現場を訪れた記者を一番最初に迎えたのは、冷たい西海からの潮風だった。厳しい寒さに首筋まで赤くなった300人余りの労働者たちは、真っ白な息を吐き出しながら忙しく手を動かしていた。クリスマスイブの風景にしては荒々しい姿だ。

「大雪で数日間作業できなかったが、工程全体は予定より一ヶ月早い。日本本社も韓国のスピードに驚いてます」。東レグループの松本道義常務とともに設計図面をチェックしていた、韓国子会社の東レ先端素材のユ・ヒョンボム常務が陽気な声で説明した。

セマングム産業団地は、群山(クンサン)空港から西海に向かって東西に長く伸びたセマングム路の南端に位置している。韓国がアジア市場を狙って産業のメッカとして育てているここに、日本企業の東レがスーパーエンジニアリングプラスチックである「PPS(ポリフェニレンサルファイド)」の生産工場を建設している。PPS樹脂は自動車のエンジンや電子製品の金属素材を代替できる高付加価値プラスチック素材で、東レ内でも核心技術製品として通じている。

サッカー場30面の大きさの21万5000平方メートル(6万5000坪)規模に、建設費だけで3000億ウォンが投入される大工事だ。東レはこのセマングム工場に、PPS原料から樹脂やコンパウンド(樹脂に添加物を混ぜて作る特殊用途のプラスチック)などを生産する、世界初の一貫生産体制を整える計画だ。東レが最尖端素材のPPS技術を海外に移転するのは今回が初めてだ。東レ側の徹底した統制の中で工事が行われていることも、技術流出に対する懸念からだ。

韓・日関係が極度に硬直しているこの時、それも韓国企業さえも入居していない広大な場所に東レが最尖端工場を建てる理由は自明だ。巨大市場の中国と浮上する東南アジア市場をつかむための新しい工場が必要だったし、その最適なパートナーとして韓国を選択したものだ。東レにとってセマングムは、アジアに向けた足がかりだ。日本企業らしく徹底実利を追求する「戦略的選択」を行ったわけだ。

今年末に完成予定の群山工場で、東レは年間8600トンのプラスチック樹脂を生産し、19%のみを国内自動車部品メーカーなどに納入して、残りの81%である7000トンは中国に輸出する計画だ。松本常務は、「中国輸出の橋頭堡という立地条件と技術力を兼ね備えた優秀な人材、新しいことに挑戦する韓国のスピードとパワーに注目した」と語った。

東レ群山工場は氷のように冷たい韓・日関係の中で、新たな協力モデルを提示するということで大きな意味を持つ。産業の胎動期であった1960年代の韓国は、日本に依存して発展を図るいわゆる「垂直分業」を選んだ。韓・日国交正常化2年前の1963年、東レがコーロンにナイロン製造技術を伝授したのが代表的な事例だ。東レ本社から技術を学んできた従業員のおかげで、コーロンはポリエステル原綿を生成することができた。日本に従属した垂直関係だった。

1990年代に入ってからは、韓国が独自の技術と市場を確保しつつ、日本と「水平的競争」体制ができあがった。サムスン電子対ソニー、トヨタ対現代自動車などの競争構図が生まれた。

いまや多くの韓・日両国の企業は、過去の垂直分業と現在の水平的競争を超えて対等な位置で協力し、ウィンウィンを追求する「水平的協力」の段階に入る試みを行っている。いわゆる韓・日経済協力3.0時代だ。東レがその新しい道を開いている。

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  • < 韓・日経済関係の変遷 >

政治の領域ではまだ相手を対立と排除の対象としているが、国境を越えて協力を身につけた日・韓両国の企業は生存のために協力している。石山博嗣韓国三菱商事社長は、「両国は技術がほぼ同じレベルに達したため、十分に連携可能だ。互いに強いので協力するわけ」だと断言した。

歳月は流れ、韓国繊維産業の師であった東レが韓国の強みを借りて、第3国に事業を拡大しようとすすんで訪ねてきた理由だ。東レが海外PPS生産工場の設立を検討するや、アジアの多くの国が誘致競争を繰り広げたという。しかし、東レ会長の榊原定征経団連会長は、自社の韓国法人の成功事例を取り上げて「韓国で学べ」と語った。

昨年7月に始まり今年の年末に完成する東レ群山工場は、すでに骨組みとなる鉄筋構造物ができ上がった。盛んに進められていた工事は、昨年12月中旬の大雪で支障が生じたりもした。工場を訪問する数日前からは雪が30センチ以上積もり、まったく工事が中断されたという。幸いなことに、この日は天気が解けたおかげで工事が再開された。チョン・ヘサン東レ尖端素材専務は、「セマングム工事現場に雪があまりにも積もったので、除ける考えすらもなかった。しかし、天気が良くなって陽が出たので自然に溶けた」と語った。

雪のように積み重なった両国間の政治・外交的葛藤も、企業の生存論理を適用するならば自然に和解のための第3の道を見つけることができると両国企業は考えている。韓・日修交50周年を迎えた今年、これからの50年のための新たな出発。世界の舞台で強者として定着したお互いを認めて、互いの長所を活用する水平的協力関係を追求する東レ群山工場は、度量の狭い韓・日の政界に、和解のメッセージを投げかけている。
  • 毎日経済_セマングム=パク・チョルヒ名誉記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2014-12-31 17:24:04




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